『首切り王子と愚かな女』初見の感想

人間、愚かでも愛おしいものなんだね。

6月24日マチソワ
あれから色々考えて、考えて、当時とはちょっと違うこと考えてたりもする…

第一幕


ヴィリの花、唯一の生命。ラケナリア・ヴィリディフローラ?花言葉「移り気・変化・継続する・好奇心・決断・緊張感」いや、沙莉(さいり)のあてがきかな...

首切り・・・他人に自らの死を委ねる→愚か?

自死・・・授かった命を自ら終わらせる→愚か?命に意味を持たせる

「ヒトも動物の一種である」だから寿命が尽きるまで走り続けろ

ナリコの『あなたもわたしも、これやらなきゃおしまいなんですよ!(意訳)』自らが望んでその道に進む「野望」ではなくて、その場をやり過ごしている印象=思考放棄?登場人物みんなそうなのでは?自己の選択に自由意志はどこまで関わっているのか、外部からの影響はどれくらいの大きさなのか。自分でやりたくてやってるのか、やらされてるのか、その物事に力を入れていくうちにどんどん分からなくなってくるもの。ナリコの欲しかったものは権力でも王子の寵愛でもなく、「自分の役割」だったから...ナリコ、今作の推しです(観劇前からそんな気はしてた。ファイナ・F・篠崎のオタクだもんね)(リヴァイアスの話をするな)。『ベルトコンベアに 載せられたまま 降りられなくなって 「夢が叶いました」』(凛として時雨『Sitai miss me』)

まぁ、「哲学的ゾンビ」かどうかなんて自分でも、周りから見てもわかんないよね...(引きずっている)

ロキの「何も考えていないような笑顔」。ツトムからロキへの「尊くあれ」という願い。その尊さがイノセンス?子ども性?でも彼の本質は「こども」ではない、たぶん。不倫してるし、大人の醜い部分に触れてるし。でもその”醜さ”に気づいているのかどうか。『”お前が誰と寝てるか”なんて関係ないって顔ができているか不安』一方的な押しつけ、願望のようなもの。それはツトムも分かっている。ロキが望んでそうしているのか、望まれているからそうしているのか... 『ヴィリ”ちゃん”』呼びなんだよな...「親しさ」というよりも「幼さ」のような...

醜いものが美しい。美しいものが醜い。ワルツのようなセックスと醜い性欲。

嫌いだったはずの従者の歌声。まだ、「大人が醜いもの」だと知らなかったころの記憶。子どもでいたい...醜い大人の世界なんて見たくない...

トルとヴィリの半身が黒い衣装・・・特質性の現れ?第二幕でヴィリが第二王女になり、ボレロを着せられたときも黒と白の二色に分かれていた。たち位置が変わったとしても、ヴィリの心の本質は変化していない?(たとえトルから距離を置こうとしても)ひとりだと欠けているけれど、ふたりそろえば...

ゲーム・ワールドイズマイン『愚者だけが王を止められる。そしてつぶすこともできる』暗喩?

「やりたくないこと」、「やらされていること」がやらなきゃいけないことになる、その結果望んでしていることのように周りから見られる→「似合わない」こと

変えることのできないものに懸命に抗おうとする者と覚悟を決めて受け入れる者→なのに何で黒魔術!?なんでもありじゃん、そんなの(ご都合主義っぽくてちょっとキレてる)

世界が早い(馬)。命 生き急ぐ 大人になる

第二幕


「生存促進要因」「生存阻害要因」生きる理由、死ぬ理由 キャラそれぞれにあったのでは?すごく幸せそうな人でも、生存促進要因が90、生存阻害要因10みたいな。そのバランスが常に移り変わっているから、人はよくわからないタイミングで、生存阻害要因が生存促進要因を上回ったある時、ふっといなくなる。

デンの『飴食べる?』は、『親子なんだから硬くならないでよ〜』と息子に声をかけたものの、自分自身も息子との距離を上手くつかめない不器用さが現れる切ないシーンで、デンの「女王でも普通のおばちゃん」という要素の表現ではないから、笑うところではないと思うのですがどうですか(オタク特有の早口)。トルの影を踏もうとしているデンが、わざとゆっくり、トルに避けてもらえるように動いているのに、トルが何もしないのは、子ども時代をドバンという”従者”と過ごしたために、そういった密接なかかわり合いを必要とする、いってしまえば「下が上に気を使わざるを得ない」遊びをしてこなかったために、トルが影踏みの遊び方を知らない(ん、でもデンがその前に影踏みのやり方説明してたからなぁ...)。もしくは、いままで自分を避けていた母が、突然優しく声をかけてきたことで、(何を考えている...?)と疑心暗鬼になっているか、母親に気をつかって(嫌われないように、失望されないように)わざと踏ませているかかなぁ...(選択肢が多い)。ところで、「影踏み」って、「踏まれた人の魂を奪う」的な都市伝説ありませんでした...?小学生の頃(10年くらい前)...?

男(トル)から離れ、『女は強い』と言ったナリコが生き延び、女児しか生まれなかったことで『国が滅ぶ』と嘆いたデンが、男(ナルとトル)への愛で引き起こした、男(先王バル)から受け継いだ国の終焉を、男(ドーヤネン)とともに迎えるのが、旧世代と新世代の対比な気がする...。リーガンもナリコも、その後生き延びているんだろうし、そこまで描く必要はない(蛇足)と思うけれど、あの退場の仕方は、「作者、逃げたな...」と思ってしまった。

ロキの使われていない剣、穢れなきもの(=子ども?...どうt、、、不倫してたからそれはないな。セックスシーンでしょ、あれ)→最後にツトムが使う=ロキの成長がツトムとともにあったことの象徴?(馬の乗り方等)→結局最後まで「子ども」なのはトルだけ?「やらされる」のが子ども?(「首切らされ王子」)あ、でもそのロキを殺したのはトルの「殺意」という「自由意志」だから、その瞬間は「首切らされ王子」ではないな。(トルの「最期」につながるように、ツトムががトルを殺すきっかけ=トルがロキを殺すっていう、物語を進めるための駒感がちょっとあったなぁと思いつつも...)(赤いライト、マジで止めて欲しい。まぁ、ジャンル的に血の表現で必要不可欠なんだろうけどさ。許さんぞ、本広克行!)(引きずっている)

トルがヴィリに伝える。『自分が見れなかった世界をお前の目が見る、お前の手が触れる』オタク、こういう託された「願い」のことを「呪い」って言うよね...紙一重なんだろうな...

「作り物の世界」であることを示す白木の舞台、ファンタジーな肩書きの登場人物。みんないなくなった。最後に残るのは現代っ子のヴィリ、ただ一人。ヴィリが走った先で、「見る」「触れる」のは新しく生まれ変わるルーブの国か、それとも現実世界か。ヴィリの愛馬、アポロ。ギリシアの太陽神で理性を司る神。そして初めて人類が月に降り立った時の船の名。

欲しかったように見えるもの→本当に欲しかったもの

トル・・・?→人からの関心

ヴィリ・・・姉をぎゃふんと言わせること→生きる理由

ツトム・・・部下につらい思いをさせたくない→自分の信仰対象を穢したくない、穢れていると思いたくない

ナリコ・・・地位、王子の寵愛→自分の役割

リーガン・・・生きる理由→?

ドーヤネン・・・?→?

ロキ・・・?→?

デン・・・?→何も失わないこと


名前の由来

トル・・・首を取る、魂を取る

ヴィリ・・・沙莉(さいり)

ツトム・・・努(つとむ)

ナリコ・・・法子(のりこ)

リーガン・・・?

ドーヤネン・・・蓬莱氏から石田氏への問い?女王から政治を任される(「どう?」)と言われる存在?

ロキ・・・「北欧神話の悪戯好きな神」。「閉ざす者」「終わらせる者」。美しい顔を持つ(これが有力?でも「美しい神」なら他にも...)。「元は火を神格化した存在」...ヴッ!(引きずっている)

デン・・・?

また考えてみよっと



追記

ここからは今(観劇からしばらく経って)考えたこと
トルは鏡
ヴィリとデンがトルに愛情の矢印を向けようとしても、ヴィリには「利用しようとしたくせに」、デンには「愛する自信が無くて捨てたくせに」っていう後ろめたい感情が沸いてきて、トルに向けたい愛のエネルギーを持っていても、それをトルにぶつけられなくて、それでトルが誰からも愛されないように見えちゃうのかな…
愛を向けられないというよりも、周りに障害があって愛が届かないイメージ。
トルを見ていると自分のそういう『愚かさ』を再確認するようになってしまう。だから鏡。

ヴィリとリーガンの「死にたい」って気持ち、似てるけど違うよね…
ヴィリは「生きる理由が見つからなかった」から。何も無いから。からっぽ。生きたとしてもそれは『余生』でしかない。そう思っていたから、無駄に命のリソースを使うよりは死のう、って感じだと思う。「死」が自分の人生の後始末。
リーガンは死ぬことで絶望から逃げようとしていた。生きなきゃいけない理由も、やらなきゃいけないこともある。でもそれは『希望』ではない。
空っぽのこれからと絶望のこれからの違い。
生存促進要因がなかったのがヴィリで、生存阻害要因に押し潰されそうになったのがリーガン。

ツトムがトルを斬ったのは仇討ち?
ツトムと仇討ちが私の中で結びつかない…
ロキの死でタガが外れた って言えば、一般論的には「そうなんだろうな」って思うけれども、部下を苦しませない(というよりも手を汚させない?)ために首切りを背負っていたツトムが、その美しい・清い(と願っていた)部下のために人殺しをする、か…?
「仇討ち」よりも「トルを止める」「苦しみから解放させる」ためなら斬りそうだなって思う…
この儀式が完了するまでに、もしくは完了した後、国にどんな厄災が起こるか、ってことを考えたら儀式をやめさせる(ことはできないからトルを殺す)しかないし、、、
その汚れ仕事を誰ができるかって言ったら自分しかいないわけだろうし……その重荷を背負ったツトムだから、ロキが斬られていなかったとしても、あそこでトルを"終わらせられた"だろうけれど…(ロキの名前、やっぱり『終わらせる者』なのかな)



2年経ってやっと追記(2023.7.4)

↑戯曲が載ってる演劇雑誌


↑「終わらせる者」

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