ひなた/吉田修一

吉田修一の小説は肌に合うなあと思うのは母校が同じだからかなあ。一定のリズムで淡々と描かれる凡々とした日々、けれど誰にでもある自分だけの小さなドラマとして拾い上げる要素に、ごく自然に溶け込める感覚がある。登場人物の誰かに共感できるかといったらけっしてそういうわけではないし、「誰にでも秘密がある」(これ、なんのコピーだっけ)みたいな不幸で暗い雰囲気はないものの実際みんなどこか暗い日陰のような部分もあるんだけど、まあそれこそ私たちの日常がそうであるようにすべて明るみになるほどのドラマはなく物語は続く。たぶんこの先も。ひなたがあるからひかげもあるという普通、それってわりと居心地がいいもので。居心地の良さでいえば、大路兄弟の家もレイの家も居心地良さそうだったなあ。そういうイメージができるってことは、家や街の描き方も上手なんだと思う。続編あったら読みたい。

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