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蓮沼執太フィル「日比谷、時が奏でる」

日曜日の午後、蓮沼執太フィルの「日比谷、時が奏でる」へ。

一時期の息苦しいような暑さを忘れる夏の終わり、Lサイズのアイスコーヒーが飲みきれなくなる夏の終わり、日が暮れるのが早くなったねと、誰に言うでもなく口にしたくなる夏の終わり、それは日比谷野音最高のシーズン。蓮沼執太フィルの特別な一夜。

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ライブの2、3日前に蓮沼くんがインスタのストーリーにあげていた言葉がとても印象に残っている。

「ぼくは心身ともに健康でいて、自分の想像力を信じて、自由に活動をする、という自分の基礎を信じています。」

これはもう私がこの音楽を好きな理由そのもの。フィルの音楽はすこやかでのびやかで豊か。でもただ心地よさが耳を撫でるだけじゃなくて、泣きたくなるし忘れていたかったことを思い出すこともある。その上で心を震わせる瞬間が訪れて、生きているということをすごく感じるときがある。

16人のフィルメンバーがそれぞれの覚悟と呼吸を持って集まって、一点を見つめて息を合わせて音を重ねて、でもその時にしか生まれない音楽を作っていくのも、生きることそのものみたいって思っている。
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この日のフィルは2部構成で、前半はナイスなゲストと26人編成でのフルフィル、後半は16人で「時が奏でる」をアルバムの曲順そのままに。どれをとっても緻密で高度、情熱的で刹那的。とてもとてもすばらしくて、永遠にたゆたっていたいようなときのなかにいた。夕暮れ頃から時々吹いた涼しい風も、蝉と鈴虫の競い合いも、ぜんぶひっくるめて忘れたくない。二度と来ない2019年の、とある夏の1日だった。

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