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鶏小屋

これから始まる新しい毎日のため、必要なものはたくさんある。本にもWebにもリスト化されて紹介されているので、何が必要なのかはなんとなくわかっているけど、これを揃えていくのが一向に進まない。

まず、店舗で見てみないとね、の店舗に行くのがコロナのせいで億劫。品定めをしたら今度はそこで、店舗で買うのか、通販で買うのか、メルカリで探すのか、判断が必要。さらには、買ったものを置くスペースも要検討。はああ、腰が重い。

でも、この腰の重さ、理由はそれだけじゃなくて、友達と長く会っていないのにも一因あるのでは、と最近気づいた。不要不急の外出を控えるように言われる一週前の3月なかば、咲き始めたばかりの桜を見に大学の友達と会って以来、もう4ヶ月以上も友人たちと会っていない。そしてこれから会う予定も、今のところない。会えたら話そう、と思っているこのことを話せていない。そして、人に話さないと、いまいち自覚に欠けるのだ。

そんなわけで、ずっと現実をぼやっとしか捉えられないまま時が過ぎてきた。そんななか、ここにこうして書くことで、現実で付き合いのある友人が連絡をくれて、少しずつ事実認識を改め始めている。おめでとう、と言われたり、予定日を聞かれたりすると、「おおお、私妊婦なんだな」と思う。周りから「妊娠している自分」を形作られていく感じ。先週は、たまたま会った家の近所に住む夫の親戚に気づかれたり、スーパーのレジ係の人が荷物を袋詰めの台に運んでくれたりして、「そうか、見た目でわかるくらいになったのか」とはっとした。

夫はというと、生まれた時から住まいが変わらないだけあって同じ町に仲の良い友人がいるので、こんなご時世でもさらっとお茶などをしていて、私より先に報告を済ませた模様。あれこれ譲ってもらう話にもなったのだそう。へー。

そんなわけで、ついに子のためのものを買った。好きなタオルブランドの、真っ白なガーゼタオル。タオルとして身体をふくだけでなく、おくるみとしても、ガーゼケットとしても使えるもの。ついに子のものを買った…!とそのときは思ったけど、結局その後も「これに子を包むのか…ふーん…子を?」と思ってしまい、紙袋に入れたまま棚に置いてある。たぶん、産まれるまでいろいろなものを買いながら、ふーんとかほほうとか思うのだろう。今はまだ使用者がいない、その人のための物を買うって、不思議だなあ。ぶじに産まれて、どれも心地よく使ってくれるといいなあ。


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