いいなぁ、うらやましい

ひょんなことから(500)日のサマーの話になって、「観たことある?」と聞かれたから「ないね」と言ったら夫がそう言った。そして続けて「これからあの映画を新鮮な気持ちで観れるのかぁ。すごくいいよ」と。

実は夫にこういう返事をされたことは前にもある。私はいわゆる名作映画をほとんど観たことがなくて、ホームアローンもプリティウーマンもスターウォーズもアルマゲドンも、ストーリーも出演者もまったく知らない(もちろんこの4つ以外にもめっちゃある、たいていの名作は知らない)。というのを人に言うとだいたい、あり得ないという驚きの「ええー!まじ!?」を浴び、下手すると「人生損してる」とか言われてしまって、私恥の文化の人間なので名作観てないイコール恥ずかしいことなんだとずっと思っていたのだけど、結婚する前の夫とバックトゥザフューチャーの話になったとき、「私観たことないからわからないや」と言ったら、彼、「えー!まじで?」とかなり驚いてたけど、とくに思慮もめぐらせずに、続けて「いいなぁー!」と言ったのだ。え、何が、と思ってじっと彼の目を見たら、「いや、初めて観るときの感覚は一回だけだからさ。それをこれから楽しめるんだなと思って」と説明を受けた。ばかにされることはあってもほめられたりうらやましがられたりすることなんてないと思ってたから、かなりびっくりした。ええいこの際まとめてカミングアウトだ!と、名作の、あれもこれも観たことないよと言うと、「これからたくさん初めて観る映画があるんだなぁ、いいねぇ」とにこにこしながら返され、たいそう感心した記憶がある。

ひさしぶりに夫に「観たことがない」ことをうらやましがられて、このときのことを思い出した。この人のこういうところがやっぱりとても好きだなぁ、一緒にいられてよかった、と思った、3回目の結婚記念日をすぐ先に控えた、とある一日だった。

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