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GRAPEVINE CLUB CIRCUIT 2018

@新木場STUDIO COAST

バインのライブはもうここ数年いつ何時もいいので改めて言うのがちょっとばかみたいなんだけど、それでもやっぱり言いたい、バインのライブ素晴らしかった。素晴らしい点が多すぎて、年に一度のご褒美みたいになってる。

今年は新譜がなかったので、(田中が勝手に)21周年記念ツアーと題したクラブサーキット。アルバム中心のセットリストにならない分、自由で、個性的な構成だった。好みが分かれそうだけど私はめっちゃ好き。あとはここ数年アルバムツアー以外のクラブサーキットやフェスだと豚の皿がフックというか軸になることが多いと思うんだけど、またそれとはガラッと変わっていたな。曲が変わるたびに、めぐる季節を見ているような、あらゆる国に旅するような。でも何より、この音楽の前では孤独が孤独のままでよくて、見える景色の色彩が変わっていく。救われた、というのとまた少し違う、最後に残る孤独感と、ただ存在するだけでいい、という感じ。あれはなんだろう。じつは最初のほうはあまり集中できなかったんだけど、徐々に足元から沸き立つ感じとか、熱いのか冷たいのかよくわかんない感じとか、あー、バインはドライアイスみたいだなーと思ったんだよな。最後には結局何もなかったような、でも聴く以前とは違う空気がそこに残る。それは本当に素晴らしいことだし、私のそばにこの音楽があってよかったと心から思った。

最近の田中のボーカルは楽曲に合わせた挑戦的なものも多いし、ライブだとアレンジが強調されて特に聴きごたえがあるなあと思うんだけど、昔の曲の再構築というか、今のアプローチの仕方は本当にしびれる。この日聴いた「その日、三十度以上」、本当によくって胸が苦しかった。思い出すだけで泣きそうになる。音源よりぐっと緩急がついていて、声に熱さと冷たさが混在して、なんていうか白昼夢みたいだった。この季節に歌うことも、演奏も、照明も、なにもかもすっごくよかった。

それにしても田中は老けないな、、そのうちに私の年齢が追いつき、追い越してしまうのではないかと思うと(そんなことはないんだけど)ちょっと怯える。ずっと憧れの兄者でいてほしいんだもん。そして同じ髪型同じシャツになって何年だろう、彼がいつも同じようにそこにいることに、勝手に意味を考えてしまう。時間軸が均等になるような、いつも独りで向き合っているような。ああうまく答えが出ない。

ライブ終わりにニューアルバムの告知映像が流れていて、そのなかにこんなことが書いてあった。

聴いた人を幸せにしたいわけでもなければ、勇気づけたいわけでもない。重要なのは、音楽を聴いたすべての人が直面するであろう、或いはしているであろう、現実という名の「光」なのだ。

音楽自体が光なんじゃなくて、たぶんそれを通して見る景色、なんだよなぁ。そしてそれは私の目でしか見えないけど、それは悲しいことではない。



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