デイ・キャッチ・アイデンティティー(3)

限りある時間の使い道として

体力の低下という話をしたけど、長時間の通勤を堪えきれなくなったのもそれと関係があると思う。私が通勤していたとき、電車の乗車時間は乗換なしの片道約1時間20分。結婚して引っ越したことでこの通勤を受容せざるを得なくなったのだけど、はじめのうちは「わりと座れるしオッケー」「本読んで有効活用じゃ!」くらいに考えていた。けど、実際はそんなわけがなく、まあ幸い行きも帰りも座れる確率は高かったんだけど、座れたらとにかく寝ていた。でも電車で寝るのって時に寝ないより疲れる。会社へ向かう電車で熟睡してしまえば、会社に着いたらまた寝起きの状態の脳から始めなくちゃいけない。帰りの電車でうたた寝するも、寝過ごしちゃならんと思えば眠りは浅く疲れは増す。正直、早起きした分を電車で寝るより、ベッドでより長く寝るほうが何倍も睡眠の質はよく体は休まるわけで。しかも通勤電車は精神的ストレスが異常に大きい、大きすぎる。くさい、うるさい、ぶつかった、咳をした、荷物が邪魔、座席の取り合いと譲り合い、等。
あの時間を思い出すと、私は何に時間をさいて何に疲れてたんだ、と思う。あの通勤時間がなくなって何か失ったものがあったか考えてみても、定期券(当たり前)、くらいしか出てこないし。仕事帰りに夫と落ち合って外食、てのもなくなったけど、それは全然問題ないし。家でごはんを作ることは基本的にかなり好きな家事で、めんどくさいときは夫に言って近所で外食、で全然オケー。会社辞めてすぐの頃は、洗濯物干しながら「あー今頃大手町あたりか」とか考えてた。この時間だとあのあたりか、つって。1時間20分て洗濯は2回回して干せるし、夕飯買い出しから仕上げまでできてしまうんだよな。

欲しいものは穏やかな暮らし

そう、私が会社を辞めてから、洗濯物が溜まることはなくなり、洗濯一回で終わらない地獄干しきれない地獄着たい服が洗濯前地獄は消えた。洗濯だけじゃない。毎日基礎体温と体重を測って記録し、猫のトイレもキレイキレイ。夜ごはんは一汁三菜(ただし米抜き、デブだから)を、夫が帰宅してすぐに食べられる。そういう暮らしをできるというだけで、めちゃくちゃ精神が穏やかだった。金が減る不安や、将来どうしよう、みたいな悩みが消えることはないんだけど、外的ストレス、つまり自分では防げないストレスがまじで減ったので、当たり散らしたり、イライラしたりしなくなった。
そして、いつまでも無職でいられるわけはないんだけど、できることとできないこと、したいこととしたくないこと、みたいなことは、こうして過ごす中でなんとなくわかってしまったので、それをベースに生き方を考えることにした。

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