見出し画像

みんなの小説講座

 みんなの小説講座
 中高生から始める小説講座
 
「第2回」
 作品を3つの要素で表してみよう
 
 アキツ フミヤ著 
 
 *今回は「第2回」となります。初めて読むという人は「みんなの小説講座 第1回」を先に読んで下さい。
 
 新学期が始まる頃ですよね。この春、高校や大学に進学したという人も多いと思います。これを機会に、何か新しいことを始めてみませんか。
 自分が興味ある分野なら何でもいいのですが、ここでは小説の書き方を学んでみることをお勧めします。
 学生の内から勉強を始めれば、この講座の目標である「20代で作家デビュー」の夢が叶うかも知れません。
 マンガ、小説、ライトノベルの分野では、高校生や大学生の若い作家が活躍しています。自分も、あんな風になりたいと思うなら、まずは書き方の基礎を学んでみましょう。
 
 自分が書いた作品がヒットして、アニメ化されたら最高ですよね。日本のアニメは世界中で大人気となっています。そんな夢に向かって、今すぐ走り始めましょう。中高生から始めても早すぎるということはありません。
 
 さて、「第1回」の課題に挑戦してみて、いかがでしたか? たぶん、上手く書けた人は少なく、ダメだったという人がほとんどだと思います。
 現時点で書けなくても心配する必要はありません。小説の書き方なんて、学校では教えてくれませんよね。つまり、習っていないことをやろうとしているので、できないのが普通です。
 
 何とか書けたという人も、読み返してみると「全然、面白くない」と感じることでしょう。面白い小説が書けるようになるには、正しい勉強方で「文章力」と「ストーリー力」を何年もかけて磨く必要があります。さらに『新人賞』を獲れるレベルになるには、かなりの努力と時間が必要です。
 ですので、まず中・高・大学生の内から小説を書く「練習」を始めましよう。
 
 自己流で小説を書いていては、いつまで経っても上達しません。まずは『みんなの小説講座』を一年間、受講して、基礎を身に付けて下さい。自分が書きたい作品を書くのは、その後です。
 
 『新人賞』の「一次選考」を担当した経験のある人に聞くと、応募者のほとんどは基礎ができていないと言います。ダメな点はーー
 
 ・「説明」と「セリフ」だけで書かれていて「描写」がない。
 ・何を言いたいのか、焦点がブレていて理解できない。
 ・自分の文体を持っていない。複数のプロ作家の文章を繋ぎ合わせたような作品になっている。途中で文体がコロコロ変る。
 ・ストーリー展開も単純で、数ページ読んだだけで結末が分かってしまう。
 ・登場人物のキャラが立っていないので、読者が物語の中に入れない。その結果、つまらないと感じてしまう。
 ・あまり小説を読んでいないのか、他の作家が書いているのと同じような話になっている。
 
 『一次選考』で落ちるのは「小説になっていない作品」です。上に挙げたような作品を書かないためにも、まずは基礎を学びましょう。これって本当に大切です。
 確実に上達する方法で学ばないと、プロになる機会を逸してしまいます。国語・現国の勉強をするつもりで、学生の内から小説を書くことに慣れて下さい。
 
 「文章力」と「ストーリー力」を鍛えよう
 
 頭の中で思い描いている場面が、うまく文章で表現できないのは「文章力」が未熟なせいです。
 小説を書いていて途中で書けなくなる、または書けたとしても面白くないのは「ストーリー力」が不足しているからです。
 
 もっと本を読むようにしましょう。単に多くの本を読めばいいというのではなく「小説を書くためのテクニックを身に付けよう」と思って読むようにしましょう。プロの作家は「描写」「セリフ」「説明」を、どう書いているのか、分析しながら読んで下さい。
 
 新刊書を買う必要はありません。TSUTAYAとか、Amazon などで安く売られている古本で構いません。過去に話題になった作品は読むようにして下さい。
 ジャンルにも、こだわる必要もありません。推理小説にしか興味がなくても、他の分野の小説も読むようにしましょう。
 
 中級者なら、どの『新人賞』に応募するのか、すでに決まっていると思います。過去の『新人賞』受賞作は、必ず読むようにしましょう。
 絶版になっている本はAmazonで古本を探すと見つかります。可能な限り入手して、分析しながら読むようにして下さい。
 
 ライトノベルを書きたい人へ
 
 小説を書いたことのない人が、いきなりラノベを書こうとすると失敗します。前回、述べたようにラノベは高度なテクニックを必要とします。まずはラノベに近いやさしい文章で、小説を書いてみましょう。
 『上段高校 重音部』は、主な登場人物は高校生で、読者も若者に設定しているので、やさしい文章で書くことにしました。難しい表現や語彙は使っていないので、ラノベ感覚で楽に読めると思います。この作品は、一人称で小説を書きたい人は参考になると思います。
 
 書きたい作品を3つの要素で表してみよう
 
 「学園物」+「恋愛物」+「バンド活動」
 
 これは『上段高校 重音部』を書く際に設定した3つの要素です。つまり、これは高校を舞台した恋愛小説で、ロックバンドの活動を通じて物語が展開するということです。
 
 初心者の作品を読むと、何の話なのか、何が言いたいのか、よく分からない場合があります。たぶん、作者自身も整理できていないのだと思います。
 こんな風に話を3つの要素で表してみると、作者自身も書きやすいのではないでしょうか。
 順番も大事です。もし、これをーー
 
 「学園物」+「バンド活動」+「恋愛物」
 
 と順番を入れ替えると、プロのバンドを目指して活動する高校生の話となり、恋愛の要素は少なくなってしまいます。
 バンドのメンバーは全員、男子(あるいは女子)で、メジャーレーベルのオーディションに挑戦したり、ライブ会場を借りるためにバイトしてお金を貯めたり、ライバルのバンドとプロデビューを賭けて対決するような話となるでしょう。
 
 何を書きたいのか3つの要素にしてみると書きやすいと思います。舞台はどこで、恋愛・推理・歴史・SFなど、どの分野小説で、何をメインにするかです。この3つの要素さえ決めておけば、話がブレることはなくなります。
 後は、登場人物を詳しく設定すれば、いくらでも話を作ることができます。ストーリーも自分で考えたことに、作者自身が実際に経験したことなどを加えると、より現実的で読者が共感できる作品となるでしょう。
 
 では、今回の「課題」です。 
 
 前回、ファナス王国のクロノス王の視点から話がスタートしました。『クロノス王戦記』は「三人称複数視点」の作品ですので、今回は、敵であるレバーン帝国のラムジンの視点からストーリーを語ります。
 まず、前回書いた注意点を読み返してから課題に挑戦して下さい。
 
 **今回の課題**
 
 次の「ダメな例文」を書き直して小説にしなさい。
 
 「ダメな例文」
 
 クロノス王のいるアメーネ城より、30キロの地点までレバーン帝国の大軍が迫っていた。
 巨大な組み立て式のテントでは、王子のラムジン、女官のラーニャ、宰相のググト、将軍のラグラ、その他6名の将軍たちが軍議を行っていた。ググトとラグラ、その他の将軍たちは床几に腰かけている。
 初老の召使もいて、テント内にあるストーブの火を絶やさないようにしていた。
鋳物のストーブが赤々と燃えて、テント内は春の陽気だ。
 レバーン帝国の第4王子であるラムジンは、ラーニャのヒザを枕にして横になっていた。酒が入って、ほろ酔い気分だ。
 
「このまま突き進んで、一気にファナス王国に攻め込もう。この国は西側諸国の拠点だ。この国さえ突破できれば、西側諸国を支配できたも同然だ」
 ラグラ将軍が立ち上がって言った。
「無謀すぎるぞ、ラグラ。ファナスは高い山々に囲まれた国、平地での戦いのようにはいかん。極寒の今、食料の調達さえ困難だと言うのに!」
 宰相のググトも立ち上がると言った。
  
「ファナスの王都まで行けば食料もある。そこで休めばいい。一気に攻め込んで片を付けよう」
 とラグラが言った。
「今までファナスを破った国はない。当然、長期戦になる。攻撃は春まで待つべきだ」
 とググトが言った。
「はるばると来て、こんな場所で待てだと、退屈で仕方がない。俺の兵たちは、イラだっている。何とかしてくれ!」
 ラグラが大声を上げた。 
「勝手なことばかり言うな。他の隊のことも考えろ」
 宰相のググトとラグラ将軍が立ち上がると、にらみ合った。
 この二人、兄弟なのだが、見た目も性格も正反対だ。唯一、目元だけが似ている。
 他の将軍たちは黙ったまま、そんな二人を無視していた。
 
「うるさいぞ。二人共、少し落ち着け」
 敷物の上に上半身を起こすと、ラムジンが言った。
「申し訳ございません、殿下。つい興奮してしまい」
 ググトが頭を下げて言った。
 ラグラも渋々、床几に腰を下ろした。
 ラムジンは敷物の上に座ったまま伸びをした。
 
「お主ら兄弟ではないか。意見が一致してからワシの前で話せ」
「はっ、そのようにいたします」
 兄のググトが言った。
「しかし、殿下。なぜ、この場に留まるのです。ファナス王国さえ占領すれば、西側諸国も終わるはず」
ラグラが言った。
「今は真冬。食料が不足している。15万もの軍勢を動かすことはできん」
 ラムジンが言った。
「あと一国ですよ。ファナスさえ倒せば、この大遠征も終わりです。胸を張って帰国できます。王都のスーラには、食料だって大量にあるはずです!」
 ラグラの無鉄砲ぶりには、ほとほと愛想が尽きた。これ以上話し合っても無駄だ。
「もう夜が更けた、軍議は終わりだ。皆の者、大義であった。下がってよい」
 あくびをしながらラムジンが言った。 
 兄のググトにうながされ、ラグラはしぶしぶテントを出て行った。
 
「では、ラーニャ。お主の意見を聞こう」
 女官が胸元から折りたたんだ地図を取り出すと敷物の上に広げた。
「密偵を西側諸国に放ち、クロノス王に関する情報を集めております」
「クロノス? 聞いたことのない名だ。どんな男だ」
「歳は18、父親と兄二人が戦死したため、ひと月前、王位についたばかりのようです。詳細はまだ」
「ワシより7つも年下か。王位を継承したばかりでは、いくさの準備さえできていないだろうな」
 思ったより、今回は楽に行きそうだ。
 
「それが、ローハル法王領の騎馬兵を多数受け入れているようで、中々の切れ者かと」
「ほう、若いが侮(あなど)れんな。それに、ファナスは地理的にも攻めることが難しいようだな」
「はい、ラグラ将軍は簡単に陥落できると言っておりましたが、ご覧下さい。ファナス王国は四方を高い山々に囲まれていて、攻め込むのは容易ではありません」
 ラムジンは身を乗り出すようにして地図を見た。
「ここを落とすには、半年、いや、もっとかかるだろうな」
 山を越えるのは無理だ。やはり、ドラゴンゲートを突破するしか方法はない。
 
「いかがでしょう、殿下。一旦、体制を立て直すために引いては。兵は疲れ切り、武器も痛んでおります。何よりも、まず補給を受けねばなりません」
「よし、食料の確保を急がせろ」
「五日後、補給部隊が到着する予定です。ラグラ将軍には補給部隊の護衛をしてもらいましょう。敵の襲撃を受ける可能性が高いと思います」
「なるほど、ワシがクロノス王なら、そうするな。では、ラグラに命じておく」
 
 (以上、ダメな例文)
 
 今回の例文にも「描写」が不足していますよね。それに、登場人物の描き分けができていないので、セリフを言っているのが誰なのか判別できません。 
「とラムジンが言った」とか「とラグラが言った」などと書くしかありません。
 
 「セリフ」と「説明」だけで小説を書くと、こんな味気ない文章になってしまいます。小説の醍醐味は、やはり「描写」にあります。
 読者は頭の中で「描写」を基に、各シーンを映像化しています。なので「描写」が下手だと、読者は物語の中に入っていくことができません。
 
 そして、クロノス王が有能な人物として描かれているからには、敵であるレバーン帝国の王子も、同等の立派な人物にしなければなりません。
 二人の有能で魅力ある王が死力を尽くして戦うから、読者は面白いと感じるのです。
 スポーツ物のマンガ・アニメでは、全部、そうなっていますよね。ライバルたちも、主人公に劣らずキャラが立っていて、魅力的に描かれています。
 ラムジンも、もっと魅力的に描くべきです。彼の過去や考え方なども詳しく書く必要があります。この辺は「登場人物を魅力的に描く」という課題に挑戦してみて下さい。これは小説に限らずストーリーのあるモノ(マンガ・アニメ・ドラマ・映画など)すべてに共通する重要な課題でもあります。
 
 では、この点に注意して書き直しを行って下さい。あらすじに沿って細かい内容を自分で考えてみましょう。私が書き直したモノと違っても構いません。面白いかどうかが問題です。
この後「書き直しの一例」を掲載しますので、自分の作品と読み比べてみましょう。
 
***************** お知らせ *************************
上段高校 重音部 一学年(前半)』を発売中です。有料(490円)ですが「1話」~「6話」は無料で読めます。この講座でテキストとして使用しますので、読んでおいて下さい。
 
 また『別冊 みんなの小説講座 #001』(無料)では『上段高校 重音部』の解説をしています。発想や、どうやって書いたのかなどを解説していますので、こちらもお読み下さい。一人称で小説を書く際の参考になると思います。
***************** お知らせ ************************* 
 
 (書き直しの一例)
 
 「クロノス王戦記」第2話
 
「腰抜けどもが! 何で攻撃しねぇんだよ。敵の城は、すぐ目の前じゃねぇか」
 ラグラ将軍の野太い声が、広いテント内に響いた。
「言葉を慎め、ラグラ。殿下の前だぞ」
 宰相のググトが、いさめる口調で言った。
「いつまでこんな所にいるんだよ。俺の兵たちがイラだってやがる」
「補給もままならん状況では動くこともできんだろうが」
「この勢いでファナス王国を征服しようぜ。ここさえ突破できれば、西側諸国は終わりだ」ラグラは床几から立ち上がると、他の将軍たちを見回した。「どうだ、お前ら、一緒に戦おうぜ。王都のスーラまで行けば食料だってある」
 将軍たちは顔を伏せ、ラグラと目を合わせようとしない。
「いいかげにしろ! 状況を見ればお前にも分かるだろうが」
 ググトも立ち上がると、ラグラと睨み合った。
 
 女官のラーニャにヒザ枕されたまま、ラムジンは片目を開けた。
 ヒグマのような巨体を揺するようにして、ラグラが熱弁をふるっている。だが、宰相のググトを始め、他6名の将軍たちの表情は暗い。
 
 ラムジン王子のテントは広く、天井も高い。中には、ラムジン、女官のラーニャ、宰相のググト、将軍のラグラ、その他、6名の将軍たちに、初老の召使いがいた。
 ラムジンとラーニャは、地面から50センチほど高くなった寝台の上にいた。
 地面からの冷気を遮るために、干し草を分厚く敷き詰め、さらに、その上にはトラの毛皮を数枚も重ねてあった。
 ラーニャは女官の服装で、きちんと正座しているが、ラムジンは、だらしなく横になっていた。レバーン帝国の王子の服を着て、頭には鷹の羽が二本付いた紺色の帽子を乗せている。王族だけが被ることを許された帽子だ。
 
 将軍たちは、王子に向かい合う形で床几の上に腰を下ろしている。
 油に火を灯した台が30個も並べられ、テント内を昼間のように明るく照らし出していた。
 
「俺たちは無敵のレバーン軍だぜ。負け知らずでここまで来た。目の前に敵の城があるのに、なんで攻撃しねぇんだよ」
「まったく我が弟ながら、お前の無鉄砲な性格には、あきれてモノが言えん!」
 ラグラの胸倉をつかむと、ググトが言った。
「何だよ、兄者。俺の隊3万が、先陣を切って突破口を開いてやるからよ。他の隊は後ろに付いて来ればいいって」
 兄の手を振り払いながら、ラグラが言った。
「後に続く者がなければ、意味がないではないか!」
「弱音ばかり吐きやがって。どいつもこいつも、役立たずばかりだな」
 今にも殴り合いになりそうな勢いで、二人の口論は続いていた。
 
 そんな二人をラムジンは寝そべったまま見つめていた。
 兄弟とはいえ、これほど外見と性格が異なるものだろうか。
兄のググトは、紺色の襟が詰まった着物をきちんと着こなしていた。頭にも、紺色の帽子を乗せている。レバーン帝国の宰相の礼服だ。
 30代後半。長身で身体つきは細いが、いかにも頭が切れそうな顔をしている。宰相として有能で、将軍たちからの信頼も厚い。
 
 一方、弟のラグラは、背は、長身の兄より頭一つ高い。全身の筋肉が盛り上がっていて、横幅もかなりある。二の腕の太さが、兄の太ももと同じくらいあった。
 スキンヘッドの頭には、刀傷が5カ所あり、左耳も半分、ちぎれていた。見た目は将軍というより盗賊団のボスのようだ。
 綿入れの服の上に革製の防具を着ていた。肩や胴体には、革の上に四角い鉄の板が何枚も張り付けられていて、動くたびに金属音がした。
 下半身は、革の乗馬ズボンの上に、ヒザを守るための金属製の垂れを付けていた。
 
 二人の印象は、まったく異なるのだが、目元だけは似ていて、かろうじて兄弟だということが分かる。 
 弟のラグラの方は、無作法な上に気性も荒い。慎重で気配り上手な兄とは真逆の性格だ。
 ただ、戦場での活躍は目を見張るモノがあった。勇猛果敢なレバーン軍の中にあっても、ラグラ隊は常に先頭に立ち、目覚ましい戦果を上げていた。
 
「二人共、うるさいぞ」
 ラムジンは体を起こすと、敷物の上にあぐらをかいた。
 ググトとラグラは急に口をつぐみ、力なく床几に腰を下ろした。
「申し訳ありません。我が弟ながら子供のような言動に、つい」
 ググトが頭を下げて言った。
「ラグラも頭を冷やせ。これでは軍議にならんではないか」
 ふてくされたような表情で、ラグラも軽くうなづく。
「でもよう、殿下。こんな場所に長居するのは危険だぜ。敵に囲まれたらマズい」
「うむ、それもそうじゃな」
 大きな湖のほとりに陣を張っていた。開けていて見通しが良い場所なので、奇襲に会うことはない。本陣から3キロの外周には、ラムジンの親衛隊3万を配置していた。敵が近づいてくればすぐにわかる。
 ただ、湖は凍り付いていて歩いて渡ることができる。敵に囲まれ、じわじわと攻撃された場合、不利な場所だ。
 
「この場所に来て、もう6日か」
 ラムジンは天井に目をやった。
 ストーブにかけた鍋から立ちのぼる蒸気が、テント内に漂っている。凍てつく外とは違い、テントの中は春の陽気だ。
 ラムジン専用のテントは組み立て式で、直径が7メートルもある。形状は地面から2メートルは円筒。その上は円錐状になっていて、中心部の高さは3.5メートルもあった。木の枠に羊の皮を張ったテントは軽く、移動時には分解して馬車で運ぶことができる。
 中央には鋳物の大きなストーブがあり、ナベが置かれていた。魚を煮る甘ったるい匂いが漂っている。初老の召使いが薪をくべ、火を絶やさないようにしていた。
 煙は、ストーブから伸びた鉄製の筒によって、天井の穴から逃がす仕組みだ。 
 
 遊牧の民であるレバーン人は、テントでの生活を好む。他国の王のように立派な城などは構えず、簡素なテントで生活していた。そして、常に居場所を変えている。これには敵に居場所を悟られないという利点もある。
 王都トンカムだけは、漢民族が建設した巨大な城塞都市をそのまま利用していた。皇帝である父親と母親、それに兄三人は、伝統を破って広大な宮城内で生活をしている。
 ラムジンは六人兄弟の末っ子だ。兄が三人いる。姉も二人もいたが、すでに他の部族へ嫁に行っていた。
 
 レバーン帝国は、7つの部族が集まった連邦国家だ。同じ遊牧民族でも部族ごとの自治は保たれている。そのため何かを決める際には、部族の代表が集まって決めていた。たとえ皇帝が提案したことでさえも、部族長の会議で承認されなければ否決される場合がある。
 強大な帝国のように見えるが、実態は利害の一致する部族が集まっただけの国に過ぎない。今でこそ、カリスマ的な力を持つ父が帝国を治めているので平和だが、皇帝が死ねば部族間の勢力争いが始まるだろう。
 次に皇帝になるには、それにふさわしい成果を示す必要がある。兄弟と言えど、それは同じだ。最後は皇帝の座を争って、三人の兄との戦いとなる可能性もあった。
 
 何も決まらないまま、軍議が終わろうとしていた。ラグラ将軍をはじめ、宰相のググトや他の将軍たちが、通常の報告をしただけだ。
 レバーン軍15万は、補給を受けられない状態が長く続いている。将軍たちの口から出るのは、不満の声ばかりだった。
「もう待ちくたびれたぜ。殿下、俺の隊が先陣を切って突撃しますんで、攻撃の許可を!」
 ラグラが、座ったままラムジンに頭を下げて言った。
 他の将軍たちが鼻で笑うのが聞こえた。
「ラグラよ。お主の気持ちも分かる。しかしのう、今の我が軍は補給が受けられず身動きがとれん。そうじゃろ、ググト?」
「はっ、食料が不足しております。兵たちはシカ、イノシシ、ウサギの他、湖の魚を捕えて飢えをしのいでいる有様。とても戦闘に参加できる状態ではありません」
 
 ファナス王国の東の門であるドラゴンゲートまで30キロの地点まで迫っていた。 というより、ラグラせいで、こんな場所まで来てしまった。しかも、補給部隊を置き去りにしてだ。
 本陣のすぐ横には大きな湖がある。湖には厚く氷が張り、生き物などいないように思えた。しかし、普段は漁師だという兵士たちが、氷に穴を数か所開けると網を入れていた。網にくくりつけたロープを引くと、驚くほど大量の淡水魚が掛かる。
 ラムジンの食卓に上る食材も、肉より魚がメインとなっている。味付けは、毎回、少しずつ変えてはあるが、6日も続くと、さすがに食欲が失せる。
 
「殿下、偵察隊からドラゴンゲートの様子を聞きました。石積みの高く強固な門で、力で押しても突破するのは困難です。さらに、近くの山頂にはアメーネ城があり、数千の守備兵がいます。あの門を突破するには、かなりの時間と労力が必要となるでしょう」
 攻城戦を得意とする初老の将軍が言った。
「おいおい、ここまで来て弱音を吐くんじゃねぇよ。あと一国だぜ。ファナス王国さえ抜けられれば、西側諸国は終わりだ」
「野戦と攻城戦では、戦い方が違う。兵力の差だけで落とせるほど、あの城はヤワではない。見た目にダマされるな」
 ラグラを睨みつけながら、初老の将軍が言った。
「あんな城、俺なら一週間で落とせる。そしたらよう、この大遠征も終わりじゃねえか。胸を張って国に帰れるってもんよ」
 太い腕を振り回しながらラグラが言った。
「黙れ、ラグラ! 補給なしで15万もの兵を動かすわけにはいかん」
 ググトが口を挟んだ。
「何だよ、兄者。俺の隊なら戦えるぜ。まだ元気だ」
 
 ラグラの言葉に、別の将軍が勢いよく床几から立ち上がった。
「殿下。ラグラ隊は、常に敵国に一番乗りで攻め込み、食料や金目の物を略奪しています。食料は他の隊にも分けるべきです」
 怒りのせいか顔を紅潮させている。
「それは違うぜ。俺がローハル法王領に到着したとき、住民どころか兵士の姿さえなかった。奴ら、食料を持ちファナスへと逃げた後だ。運びきれなかった食料は燃やされてた。俺たちは焼け残った食糧しか手に入れてねぇ。俺たちだって腹ペコなんだよ」
 ラグラも立ち上がると、その将軍を睨みつけた。
 
 ラムジンは頭の帽子を取ると、敷物の上に投げた。
「早すぎたのじゃ、ラグラの進軍が。ワシはナンダハン川の手前で待てと命じたはずじゃぞ」
 中東の国々を制圧するの2年半かかった。これは予定通りだ。高い壁に守られた中東の城塞都市は、車輪の付いた攻城車や投石機を使い、ひとつずつ落としていくしかない。
 全兵力を3分割して、広大な中東地域を北部方面、中部方面、南部方面と3つのルートから攻略していった。
 国を出てから2年半、ようやく中東諸国の平定が終わった。
 中部方面隊にいたラムジンは、各部隊にナンダハン川の手前で落合い、待機するよう命じた。
 
 西側諸国がオルル川と呼ぶナンダハン川は、川幅が16キロもある大河だ。中東と西側諸国とを分ける目印のような存在でもある。
 当初の予定では、この川の手前で、3つに分かれた軍を合流させ、戦死者や負傷兵、約2万人を本国へと馬車で搬送。そして、本国から来た新たな兵を補充し、部隊を再編成。補給部隊とも合流して食料や武器なども調達。さらに、ローハル法王領へ攻め込むための船を用意してから、渡河作戦を決行する予定だった。
 
 だが、真っ先に到着した南部方面のラグラ隊は、勝手にナンダハン川を渡り、ローハル法王領へと進軍。さらにローハルの領土を突っ切り、ファナス王国の間近にまで迫っていた。ようやく本隊が追い付いたのが、今いる場所だ。
「俺はよう、ローハルの戦力が整ってねえという話を耳にした。攻めるには今しかねえと思った。ぐずぐずしてたら、西側諸国が兵力を増強しちまうからよ」
 ありったけの船をかき集めて川を渡ったという。物資輸送の大型船から小さな漁船まで借りあげてだ。
 
「ラグラよ、お主が優秀な将軍であることは認めてやろう。じゃがな、その向こう見ずな性格が、時として我が軍に災いをもたらすこともあるのじゃぞ」
 ここは強く叱った方がいい。明らかに命令違反だ。重罪に等しい。
 ラムジンの言葉に、ラグラは力なく床几に座り込んだ。
「俺はその、殿下のために……」
 さっきまでの勢いが嘘のように、ラグラの声が小さくなった。
「何だ、ラグラ。申してみよ」
「今までの王は、三人共、このローハル法王領で命を落としてる」
 ラグラが、下を向いたまま言った。
 テント内にいる全員が、ハッとした様子でラグラを見た。
「まだ、ここで勝った王はいねぇ。生きて国に帰った王もだ」
 ラグラが再び立ち上がった。
「バカ、何を言ってる。黙れ!」
 ググトも立ち上がると、両手で弟を制した。
 ラグラが軽く兄の肩を突いただけで、ググトは後ろに倒れ尻もちをついた。 
「俺は殿下にそんな目に合って欲しくねぇんだよ。生きて祖国に帰してやりてぇ」
 ラグラの口調は、ウソ偽りのないように聞こえた。
 将軍たちも黙ったまま聞いていた。
「西側諸国に攻め込むのは、レバーン帝国の長年の夢なんだ。何度も挑戦したけど、全部失敗に終わった。でも俺たちならできる。もし、また失敗して祖国に帰ったら、ただじゃ済まねぇぞ」
 ラグラの言葉に、他の将軍たちは苦い表情をした。
「もういい、ラグラ。座れ」
 ググトが座るように促した。
「俺は誓うぜ。殿下のためになら、俺は命を捨てられる。最後まで戦い続ける。この遠征には殿下の命運がかかってるからよう。失敗できねえだろうが」
 ググトが、ラグラを座らせようとしたが、ラグラの巨体は、びくともしない。
「お前ら、それでもレバーン軍の将軍か!」ラグラの声が、再び大きくなった。「勝負は今しかねぇ。敵の準備が整う前に、前進してドラゴンゲートを……」
 
 ストーブから大きな音がした。テント内の全員が、驚いたように目をやった。大鍋から汁があふれ出て派手に蒸気が上がっている。
「す、すみません!」
 召使いが、手袋をはめ大鍋をつかむと、あわててテントから出て行った。
 水を差された感じになり、ラグラも力なく床几に腰を下ろした。
 テント内が重い沈黙に包まれた。10人の人間がいるが、言葉を発する者は誰もいない。
 外を吹き抜ける風の音が、やけに大きく聞こえる。
 
「殿下、夜も更けました。これにて軍議は終りといたしましょう」
 宰相として空気を読んだのか、ググトが事務的な口調で言った。
「うむうむ、そうじゃな。今日はこれまでとしよう。一同の者、大義であった!」
 ラムジンは、再び、横になると女官のヒザの上に頭を乗せた。
 ググトは、毛皮のコートを羽織ると、頭を下げ、そそくさとテントを出て行った。
 他の将軍たちも、次々と後に続く。 
 ラグラだけは、何か言いたげに、ラムジンたちを見ている。
 
「よしよし、今夜はかわいがってやろうかのう」
 ラムジンが、ラーニャの頬をなでた。
 薄茶色の長い髪を結い上げ、広い額が露わになっている。くっきりとした眉と大きな茶色の瞳が印象的だ。形のいい鼻、ふっくらした唇、どれも自分好みだ。
 下から見上げると、アゴのラインが何とも優美で、つい見とれてしまう。
 彼女の母親は北方民族の出だと聞く。肌の白さと彫の深い顔つきは、そのせいか。
「もう、殿下ったら、いけないお方!」
 こちらの意図を察したのか、ラーニャも演技をしてくれた。
 女官と戯れるフリをして、ラグラを無視することにする。
 大きなため息が聞こえた。横目で見ると、ラグラが入り口の幕を乱暴に跳ね上げて出て行くのが見えた。
 
「行ったようじゃな。うるさい奴め」
 ラムジンは座り直すと、礼服の首回りを緩めた。
「ラグラ将軍の行動は軽率すぎます。皇帝陛下や殿下のお兄様方なら、命令違反で処刑するところですよ」
 真剣な表情で、ラーニャが言った。
「うむうむ、父や兄たちは容赦ないからのう。しかし、いざ戦いとなれば、ラグラほど腕の立つ武将はおらぬ。ワシには、ぜひとも必要な男じゃ」
 
 15万の兵力を擁しているとはいえ、真に味方だと言えるのは、自分の配下の親衛隊3万とラグラ隊の3万だけだ。残りの9万は、父や兄、そして他の部族から借りた兵にすぎない。
 将軍たちの中には、西側諸国を手に入れた暁には、自分の首を討ち取り、兄たちの元へと持ち帰ろう、と企んでいる者がいるかも知れない。
「殿下は、ご兄弟の中では、最も賢く理性のある王子です。いずれは皇帝となるお方、自分の家臣にも厳しくなされませ」
 軽くたしなめるように、ラーニャが言った。
「うむうむ、そうするとしよう」
 ラーニャの言葉だけは、なぜか素直に聞くことができた。
 
「しかし、なぜ、父上は末っ子のワシに大遠征を命じたのかのう。ワシが、いくさ嫌いなのは、よく知っておるはずじゃが」
 皇帝である父が、領土拡大に執念を燃やすのが理解できない。父自身も、後継者争いで兄弟や叔父たちと戦って勝ち、皇帝の座を手に入れた。さらに全アジアの統一にも成功した。 
 にもかかわらず、今度は中東を侵略し、さらに西側諸国まで手に入れろと自分に命じた。軍人でもない自分に大遠征の指揮を執らせるなど、正気の沙汰とは思えない。
「老いた王ほど、強欲で醜いものよのう」
 70歳を過ぎてなお、世界に自分の力を誇示しようとしている。哀れとしか言いようがない。歴代の皇帝のように40代、50代で死んでくれたら、息子の自分がこれほど苦労することなど、なかっただろうに。
 
「歴史を変えようとされているのでは。誰も成し得なかった世界征服の夢を託されたのですよ。皇帝陛下から信頼されている証ですわ」
「下らんのう。全アジアを手に入れただけで十分ではないか」
 軍人に仕事を与えるために侵略戦争を行う。これでは、いつまで経っても戦いが終わることなどない。
 たとえ、世界を統一ができたとしても、今度は味方同士での勢力争いが必ず起きる。世界は広く、多くの民族がいて、ひとつにまとめるなど不可能だ。
「このままでは、いつまで経っても、いくさが終わることなどなかろうて」
 レバーン帝国が、これまで通り繁栄していくためには、他国から物や人を奪うしか方法がない。侵略戦争こそ、この国の主要産業なのだ。
 
 元々、レバーン人は遊牧の民で、家畜を連れ広大なユーラシア大陸を放浪していた。決まった土地を持たず、財産は家畜だけ。移動式のテントを住まいとする質素な生活を送ってきた。 
 しかし、あちこち移動していると、他国の人々が、自分たちより豊かな暮らしをしていることを知る。自分の土地を持つことの大切さもだ。
 理不尽にも遊牧民は行く先々で迫害された。辿り着いた場所にテントを張っていると、そこの住民から攻撃を受ける。時には、その国の軍隊まで出動してくることもあった。
 
 いつしか身を守るために集団で武装するようになった。レバーン人は、他のどの民族より上手に馬を乗りこなす。この卓越した能力で強力な騎馬兵団を組織した。疾走する馬の上から矢を射ることに関しては、レバーン人の右に出る者はいない。
 馬の持つ機動力を最大限に活かし、攻撃しては素早く退くという戦法を駆使して、他の民族を圧倒していった。領土を拡大すると同時に、他の国々を従属させて、税を収めさせた。レバーン人は、もはや貧しい遊牧の民ではなくなった。
 言い換えれば、簡単に富を得る方法を知ってしまった。家畜を連れて過酷な長旅に出るより、他の民族が建設した城塞都市を手に入れ、そこに定住する方が楽で、遥かに豊かな生活ができる。
 そして、そんな生活を維持するために、他国への侵略を続けた。遊牧民族が戦闘民族へと変わった瞬間だ。言い伝えでは、およそ200年前のことだという。
 以来、レバーン人は、取り憑かれたかのように他国へと攻め込むことを続け、領土を拡大させてきた。
 
「これでは他国から蛮族と呼ばれても仕方がないわい」
 ラムジンは、盆の上から盃を手に取ると、馬乳酒を一気に飲み干した。なぜか、いつもよりマズく感じる。 
「以前、殿下はおっしゃいました。我が国を平和で豊かな国にするためには、自分が皇帝になるしかないと」
 四人の兄弟の内、皇帝になれるのは一人だけだ。たとえ兄弟でも、皇帝の座は戦って奪い取る。それがレバーン帝国の掟だ。
「そうじゃ。ワシが皇帝となって、国のあり方を根本から変えてみせる」
 
 大遠征を開始して間もない頃のことだ。陥落させた城塞都市へと、初めて馬で乗りこんだ。
 王子として、きらびやかな衣装に身を包み、儀仗兵を引き連れての入城だ。 
 ラムジンとしては、大遠征の始まりを飾る晴れの舞台となる……はずだった。
 攻略したばかりの城塞都市に入った途端、目にした光景にラムジンは打ちのめされる。
 街は破壊し尽くされ、あちこちから煙が上がっていた。元は美しい街並みであったことは、焼け残った壁の色とりどりのタイルや装飾を施した屋根瓦から分かった。
 突然、強烈な悪臭に襲わた。目に染みるほどの刺激臭だ。
 驚いて馬を止めようとした。
「殿下、落ち着いてください! 止まらないで」
 親衛隊の隊長から進むように促された。
 後ろには近衛軍団の騎馬兵たちが続いていた。押されるようにして前へと進む。
 広場には、切り刻まれた敵兵の死体が山と積まれていた。頭部がない死体ばかりだ。
 切り離された首は、街中の道に沿って整然と並べられている。どの部隊が討ち取ったかが分かるように、部隊名を書いた板が置いてあった。
 頭部は、すでに腐りかけていて、ウジもわいている。大量のハエも飛び回っていた。
 眼球が溶けて、流れ出ているのもある。首だけになっても、まだ表情は残っていた。どれも無念そうな顔つきをしている。
 幽霊など信じてもいなかったが、この首たちを目にして震えがきた。
 気分が悪くなり、馬上で吐いてしまった。
 
「殿下、これを」
 部下からもらった布で鼻と口とを覆ったが、何の効果もなかった。血の匂いと腐敗臭とが鼻をついた。息を吸うたびに、肺が腐っていくようだ。
 これが戦場というものか。
 名だたる武将が、華麗に戦場を駆け抜ける英雄伝を聞かされて育ってきた。自分もいつか、そんな英雄になる。そう信じて将軍たちから戦い方を教わってきた。
 地形を忠実に再現した模型を使った座学では、優秀な成績を収めた。作戦を立てることも楽しく、無敵のレバーン軍なら、どんな敵も楽に勝てると思っていた。
 しかし、目の前に広がっている光景は、想像を絶するほど凄惨なものだった。もし地獄というものがあるとしても、ここよりはマシなはずだ。
 
 顔や身体を黒い布で覆ったレバーン兵たちが、落ちている人の手足や肉片を拾い集めて、荷馬車に放り込んでいた。戦闘中は茶色の制服に黄色のスカーフを身に付けているが、死体を処理するときは黒ずくめの服装に着替えて行うという。 
 黒い服を着ると悪霊から身を守れるという言い伝えがあるからだ。
 
 レバーン兵たちは世間話をしながら、慣れた手つきで作業をしていた。そのこともラムジンにとっては、衝撃的だった。兵士にとっては、これが日常となっている。これでは肉屋が家畜をさばいているのと同じだ。
 逃げ出したい衝動に駆られた。だが、王子が占領した都市を視察することは義務だ。兵士たちに、ねぎらいの言葉をかけなければならない。褒章の儀式も行う必要がある。兵士の忠誠心を保つには必要不可欠な行事だ。
 
 ラムジンの姿を見て、兵士たちが集まり整列した。レバーン軍の普段の制服とは違い、目以外を黒い布で覆った集団は、ひどく不気味に見えた。
「殿下、ここで祝辞を」
 親衛隊の隊長に促され、馬を降りた。
 地面に降りたとき、靴の裏に違和感を感じた。足元を見ると、地面に半分埋もれた左手首があった。薬指に指輪をはめた男の手だ。
 敵の兵士だったとはいえ、この男にも家族がいたはずだ。自分たちが街を攻撃しなければ、この男とその家族は平穏に暮らしていたことだろう。
 
「大遠征の最初の勝利だ。諸君らの活躍を讃える。これまでレバーン帝国が成し得なかった世界征服の夢を、我々が叶えてみせようではないか。我々が歴史を作るのだ。我々こそ、世界の頂点に立つべき帝国である。引き続き、諸君らの健闘を祈る。レバーン帝国に栄光あれ!」
 用意していた言葉を早口で言った。
 兵士たちの表情を見回す。どの顔も誇らしげで笑みさえ浮かべている。
「俺は、首を4つ取った」
「俺は6つだ」
 兵士たちの自慢げな声を耳にして、父に対する憎しみが一気に増した。
 そそくさと、その場を後にする。
「ラムジン王子、万歳!」
 兵士たちの歓声が、自分に対する嘲(あざけ)りのように聞こえた。  
 
「女子供はここに集めております。500人ほどいます」
 柵で囲まれた広場に、若い女性や子供が押し込められていた。
 誰もが、薄汚れた服で、痩せこけていた。二か月にも及ぶ包囲戦で、市民たちも疲弊しきった様子だ。
 目には生気がなく、無表情のまま地面に座り込んでいる。父親、夫、兄弟たちを含め、多くの市民が斬り殺されるのを目にしたからなのだろう。
 大勢の女子供がいるのに静かすぎる。飢えと恐怖のせいで声を出すことさえできないように思えた。鳥のさえずりしか聞こえてこない。 
「この者たちは?」
「奴隷として売るのですよ。我が軍の戦利品です」
 ラムジンは言葉を失った。この都市の財宝を奪っただけでなく、人間を家畜のように売り買いするとは。
「年寄りは殺しました。商品価値がないので」
 誇らしげな表情で報告する兵士に、強い憤りを感じた。
「釈放せよ。女子供まで捕らえる必要はない!」
 
 占領した城塞都市を再興させるためには、レバーン帝国の駐留軍が、生き残った地元民を保護して働かせるべきだ。女子供までも奪えば、この街は廃墟と化してしまう。
「それはできません。皇帝陛下のご命令です。いくさには金がかかります。女子供を捕らえて奴隷として売ることは、軍にとっては大事な収入源なのです」
 そのために、奴隷商人を同行させているのだという。
 王宮にいる者が優雅な暮らしができるのも、他の国の犠牲の上に成り立っている。さらに、侵略戦争を行うための戦費が、奴隷貿易によって捻出されていた。現実を突き付けられ、ラムジンは返す言葉がなかった。
 農民兵たちが、今回の大遠征に多く参加しているのも、攻め滅ぼした国から金目のモノを略奪するためだ。 
 
「ワシは認めんぞ。侵略戦争によって繁栄する国家など滅んだ方がマシじゃ」
 レバーン帝国の国家としての在り方を変えてみせる。そのためには、父を皇帝の座から引きずり下ろし、三人の兄とも戦う覚悟がある。 
「私利私欲で言っておるのではない。国家と言うのは、他国との交易によって栄えるモノじゃ。いくさによって他国から富や人を奪い取るのは、人殺しや盗人と同じではないか」
 他国から招いた学者たちの講義では、そう学んだ。
 
 静かに聞いていたラーニャが優しく微笑んだ。
「殿下は本気で国のことをお考えなのですね。そんなところが、私は好きです」
 その言葉は素直に受け取ってもいいのだろうか。
 胸の内をラーニャに話すことで、落ち込んだ心が軽くなる。自分の考えは間違ってはいない。そう確信することができた。
「うむうむ、こんな話ができるのは、お主しかおらんからのう」
 他の者に漏らしたら、自分の身が危ない。
「私は殿下に従いますわ。この命も惜しくはありません」
「ワシにできるか心配じゃ。父や兄三人とも戦うことになるやも知れん」
 
 父親から、この大遠征を命じられたのは不幸なことだ。だが、いくさに参加して学んだことは多い。王都にいた頃の自分は、何と無知で、ひ弱な王子だったのだろう。
 あの環境の下で大人になっていたら、兄三人との権力闘争に敗れて、最後には殺されていることだろう。皇帝になれるのはただひとり。兄弟とはいえ、いずれは戦わなければならない。
 この2年半の間、戦場で過ごし、身を守る術(すべ)と知恵は身に付けた。敵を欺く(あざむく)方法もだ。それらを活かせば、兄たちを出し抜き、皇帝の座を手にすることも十分、可能だ。王宮に引きこもって、酒と女に溺れている愚鈍な兄たちとは違う。
 レバーン帝国の未来のために、自分が皇帝になって、大改革を断行する。国家として正しい方向に向きを変える。それが自分の使命だ。
  
「それには、目の前のファナス王国を倒すことが絶対条件となります。西側諸国を平定できなければ、帰国も叶いません」
「そうじゃな。勝たねば意味がないのう」
 ここで失敗すれば、皇帝の座が遠のくばかりではなく、過去、ナンダハン川を渡った三人の王にように命を落とすかも知れない。
 
「先ほど、密使より、ファナス王国の地図が届きました」
 胸に手を置き、ラーニャが言った。
 白い着物の上に、朱色の着物を重ね着している。王宮での女官の正装だ。胸の膨らみが、ラムジンの目を引いた。
「うむうむ、それは、ぜひ見たいのう」
 女官の胸元に手を入れようとしたが、やんわりと払いのけられた。
「殿下、自分で出しますゆえ」
 
 ラーニャが、胸元から小さく折りたたまれた地図を取り出すと、広げた。
「地形をよくご覧下さい。ファナス王国は、これまで占領してきた国とは、ひどく異なります」
 王都スーラは平地にあるものの、南北を高い山々に囲まれている。国土は東西に細長い。
「うむうむ、これはまた奇怪なる国じゃのう。なぜ、このような山の中に住むのじゃ。畑にする土地も少ないようじゃが」
「ファナス王国は東西貿易によって栄えた国です。アジアや中東と西側諸国を結ぶ拠点となっていて、世界中から珍しい品々が集まってきます」
「ほほう、豊かな国だとは聞いてはいたが、それが理由なのじゃな」
「侵略戦争などせずとも、西側で最も豊な国となっています」
 
 ラムジンは腕組みをすると、考え込んだ。
「まさに、ワシが理想とする国じゃのう」
「彼らは、守りに徹した戦い方に長けています。騎兵の数は少ないようですが、歩兵と弓兵は、よく鍛え上げられているかと」
 標高3000メートルの山々が行く手を阻んでいる。しかも、反対側に抜けるられる場所は、一カ所しかない。東に位置するドラゴンゲートのみだ。
「その東門を守っているのが、アメーネ城の兵士たちです」
 
 ひとたび国内に入ると、広い道が東西に伸びているのが分かる。途中、道が直角に折れ、コの字型になり、再び、元の道に戻っている場所が五か所あった。
「これは敵の侵入を防ぐための砦のようなものです。この部分には、多くの守備兵がいることでしょう」
「仮に、城壁を突破できたとしても、前には進めぬか」
 山を切り開いて作られた道も多く、両側が切り立った崖となっている。この上から矢を射られたり、巨石を落とされたりしたら、自軍の犠牲も多大なものとなるだろう。
「なるほどのう、西隣のセシス王国が侵攻をためらったのも分かるわい」
 常に、隣国と戦闘状態にあれば、ファナス軍の実力は相当なレベルだと見ていい。 
 
「厄介じゃな。中東での攻城戦にようにはいかぬか」
 中東の城塞都市を攻略するときは攻城車を使い、兵士を城壁の上へと飛び移らせる方法を採用した。味方の犠牲も多かったが、人数で圧倒して攻め落とすことができた。
 しかし、ファナス王国を攻略するには新たな作戦を考える必要がある。 
 
「他の将軍が言った通り、この戦いは長引くでしょう」
「そうじゃな。あせりは禁物じゃな」
 ここは慎重に作戦を練るべきだ。ラグラの言うように、ただ数で押すだけでは、勝利は遠のくばかりだ。
「クロノス王とやらは、どんな男じゃ?」
「それが……。あまり情報がありません。前王クレイウス3世の子供は男三人。上の二人は成人し、妻や子供がいました。しかし、ひと月前、セシス王国との戦いで、前王と二人の息子は戦死しています」
「それは聞いておる。急に王となったようじゃが、まだ若いようじゃのう」
「はい。王宮にはいないようなのです。ファナスには王立アカデミーがあり、学問が盛んです。どうやらクロノス王は、そこの学生のようです」
「学生じゃと? 軍人ではないと言うのか」
「ええ、三男のクロノスのことは、国民でさえ、よく知らないようです。家系図によると、歳は、まだ18になったばかりです」
「18だと? ワシより7つも年下か」
 
 少し安心した。軍を指揮することが、いかに困難か、自分はよく知っている。
 敵の王が7つも年下で、即位したばかりなら、自分よりもっと苦労しているに違いない。若き王同士、死力を尽くした戦いとなるだろう。
「どちらかが命を落とすじゃろうな」
 死ぬこと自体は怖くはない。
 ただ、レバーン帝国の皇帝になり、国の改革をせずに死ぬのは耐えられない。そのためには少しだけ長生きをしたい。
 
『ナンダハン川を越えてはならぬ。かの地は、黄泉(よみ)の地、死者の地、戻れた者も、ただの土塊(つちくれ)。魂を食われた、ただの土塊』
 レバーンのわらべ歌に、そんな歌詞がある。103年前、69年前、42年前と、三度に渡って、中東と西側諸国とを隔てるナンダハン川を越えて進軍した王たちがいる。
 だが、部下に殺されたり、病に倒れたりして、生きて戻れた王はいない。
 生還できた兵たちも、西側諸国との長く苦しい戦いを経験し、精神に異常をきたす者が続出したのだという。
 
 この川を渡る者は、現世に分かれを告げる儀式を行う。名前を書いた木の札を川の土手に埋め、自分の墓を立てるのだ。生きて戻れた者は、この札を掘り起こして、身につけなければ、悪霊に魂が食われるのだという。
 くだらない迷信だと思い、無視しようとしたが、宰相のググトから「これは我が国に伝わる伝統儀式ですから」と強く言われ、渋々、従った。
 ただ、今の状況を見ると、案外、それは正しいのかも感じている。あの川を渡ってから、ひどく落ち着かない気分になっていた。言いようのない不安に駆られることもある。
 これまで川を越えて進軍した3人の王たちは、ローハル法王領さえ、征服することができなかった。ローハル法王領を超え、ファナス王国の近くまで迫ったのは、自分が初めての王になる。誇らしい反面、それが、逆に心理的な負担となっているのは確かだ。
 
 ナンダハン川を大型船で越え、向こう岸に着くと、風景が一変した。砂地や岩だらけの赤茶けた中東とは違い、肥沃な大地が広がっていた。そこはもう西側諸国の最も東の国、ローハル法王領だ。
冬なので雪をかぶってはいるが、麦を始め様々な農作物が栽培されていたであろう畑が、地平線の彼方まで続いていた。
「ナンダハン川を渡り、ローハル、そしてファナス近くまでは無事に進軍できた。いや、誘い込まれたと言うべきかのう」
 西側諸国がローハルの守りをワザと手薄にして、自分たちをおびき寄せたと考えられなくもない。
「ファナスのマローン公とは連絡が保たれておるのじゃろうな」
「それが、数日前から使者の行方がわからなくなりました」
「ふむ、敵も気付いたようじゃな」
 マローン公との連携が取れなければ、不利な戦いとなる。ファナス王国への侵攻は、相当な犠牲を伴うことだろう。ラグラ以外の将軍たちが、ためらうのも納得がいく。
 
「それにしても、よく、このような地図が手に入ったのう、お主の胸は宝箱か?

 ラーニャの豊かな胸を指でつついた。
「殿下、私は女官に扮した軍師です。慰み者となる女なら、いくらでもおりましょうに」
 怒った顔も愛らしい。
「宮廷の女どもはつまらん。ワシの子を授かろうと、争って寝室に忍び込んでくる。毎晩、30人もじゃ」
 男の本能で、夜は夢中で快楽をむさぼることができる。しかし、翌朝、目覚めて、裸の女たちが、だらしなく寝そべっているのを見ると、ひどく嫌な気分になる。器量の良い女たちで、性に対しては貪欲だが、知性に欠ける者ばかりだ。
 ラーニャのように、賢く、気高い女の方が、はるかに魅力的だ。
 父親から優秀な軍師を付けてやるから安心しろと言われたときは、まさか、それが若い女だとは思いもよらなかった。最初の頃はラーニャの采配に疑問を持った。しかし、勝利を重ねるうちに彼女の才能を認めざるを得なかった。今ではラーニャなしでは生きていけないほどとなってしまった。軍師として、そして精神的な支えとして。
 
「この際、はっきり申しておきます。軍師たる者の役目は、仕官した主に最良の策を進言することでございます。私情に溺れぬためにも、殿下と、そのような関係に陥ることは絶対にございません」
 さすがは曾祖父の代から軍師としてレバーン帝国に使えてきた一家の娘。賢さと貞操の堅さは、宮廷の女たちとは比べものにならない。
「うむうむ、それは良い心掛けじゃ。まあ、これでお主の心のカギを開ける楽しみが増えたわい。その美貌と豊かな胸、女軍師としてだけのものなら、もったいないのう」
 都合のいいことに、宰相のググトを初め、将軍たちでさえ、ラーニャはただの女官だと思い込んでいる。当分の間、ラーニャに関することは伏せて置くことにする。
 
「お戯れはこれくらいにして、作戦をお話いたします」
「うむうむ、話してみよ」
「この場を拠点として15万の軍を立て直します。補給部隊の第一陣は、5日後に到着する予定です。兵たちには、互いを見張らせて、逃亡する者が出ないようにするべきです」
 空腹に耐えかねて脱走する者がいれば、軍の士気は一気に下がる。それに、もし、脱走兵が敵国に捕らえられれば、こちらの窮状が漏れてしまう。
 レバーン軍が飢えて動けないことが知れたら、西側諸国は、ここぞとばかりに結集して反撃してくるだろう。
「兵たちには自由に食料を調達することを許そう。補給部隊が到着するまでは何とか耐えるしかないのう」
 なるべく動かずに体力の消耗を防ぐことにする。
「武器の修理も急がせましょう。鍛冶屋には食料の支給を多くするのが良いかと」
 中東での長い戦いで、剣や槍も傷んでいた。弓矢さえ不足している。今は、次の戦いに備えて準備を怠る訳にはいかない。
 
「問題はラグラじゃな。あ奴の血の気の多さには、ほとほと参ったわい」
「良い考えがございますわ、殿下。補給部隊を迎えに行かせましょう。今は何よりも食料と物資の補給が急務。ラグラ隊が護衛してくれれば安心です」
「それは良い考えじゃな。ワシがクロノス王なら、間違いなく補給部隊を狙うじゃろう」
 この際、ラグラ隊は後方へ下がらせた方がいい。そして、クロノス王率いる軍と戦わせてみよう。敵の戦法を知るには、良い機会だ。
 
「それでは、殿下。夜も更けました。私はこれで」
 ラーニャが立ち上がった。
 見上げると、適度に膨らんだ胸、引き締まった腹回り、形のいい尻が目に入った。
「ここで休めばよいではないか。ワシは一人では眠ることができぬ」
 今夜は一緒にいて欲しい。本気で、そう思った。
「また子供みたいなことを。殿下は立派な大人です。お疲れでしょう。ごゆっくり、お休み下さい」
 着物の上に毛皮のコートを羽織りながら、ラーニャが言った。
「広くて暖かいテントの方が、よう眠れるかと思うが」
「ご心配なく。子供の頃より父に厳しくしつけられました。私は狭くて冷たいテントの方が慣れておりますゆえ」
 毛皮のブーツを履き、一礼をした。
「ラーニャ、腹が減ってはおらぬか? 夜食に甘いモノはどうだ。ハチミツ入りの菓子もあるぞ」
「いいえ、結構です。では、失礼いたします」
 ラーニャがテントを出て行った。
 
 ラムジンは敷物の上に大の字になると、目を閉じた。
 広いテントに一人きりになると、寂しくて気が変になりそうだ。2年半にも及ぶ激しい戦いの連続で、ラムジンの身体は疲弊し切っていた。精神も蝕まれつつある。
 酒に溺れかけたこともあった。しかし、ひどい二日酔いを繰り返し、地獄の苦しみを味わうだけだった。
 そんなラムジンを支えてくれたのが、同じ歳のラーニャだ。軍師としてだけではなく、良き妻のように接してくれる彼女のおかげで、どうにか正気を保つことができた。
 先ほど触れた彼女のほほの感触が、まだ指先に残っている。その温もりを頼りに、何とか眠ろうとした。
 
 足音が聞こえた。
「ラーニャ、戻って……」
 期待して目を開くと、召使いがナベを手に立っていた。
「すみません、殿下。起こしてしまって。ナベを洗って参りましただ」
 男が、ストーブに薪をくべ始めた。
「もうよい。お前も下がって休め」
「へえ、火が消えないようにしたら出ますだ」
「早くしろ。ワシは、人がいると寝付けぬのじゃ」
 
(解説)
 クロノス王が有能な人物として描かれているからには、敵であるラムジンも、彼と同じか、それ以上に頭の切れる王子でなくてはなりません。
 片方が強すぎて、あっさり勝負がついてしまうようだと、読者は読む気をなくしてしまいます。
 
 それからラムジンも魅力的な人物として描く必要があります。彼の心の中を「描写」して、どのような考えの持ち主なのか、読者に知ってもらいましょう。
 ただの蛮族の王子としてではなく、知性と慈愛に満ちた人物として描きました。それに女軍師であるラーニャに恋していて、何とか取り入ろうと、ちょっかいを出しています。ただ、ラーニャも軍師として仕えているので、一線は越えないように心掛けていますがね。
 
 スポーツマンガなどでは、ライバルたちも、主人公に劣らずカッコよく描かれてますよね。三人称複数視点で書くときは、この要素を作品に取り入れて下さい。
 二人の主人公が危機に陥るたびに、読者がハラハラしないようでは、読む価値のある小説とは言えません。
 今回は以上です。
 
 『みんなの小説講座』第2回 終了









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?