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邪馬台国:4つの九州説+四国説の根拠

現在の邪馬台国論争は一強多弱だという見方があります。近畿説が一強であり、九州説は多弱だというのです。

  • 近畿説 大和(纏向遺跡)でまとまっている

  • 九州説 九州の中でも複数の説があり、まとまっていない

寺澤薫さん(纏向学研究センター)は「邪馬台国九州説によれば、王都の位置はおろかその領域さえ定まった説がない」(『弥生国家論』(敬文舎、2021年))と九州説を揶揄しています。

確かに、2010年に福岡歴史ロマン発信事業実行委員会が一般人を対象に行ったアンケート(図表1)では、870人以上の人が投票し、邪馬台国の候補地は50ヶ所以上にのぼりました。ほとんどが九州説です。「第1位は甘木・朝倉地域の131票、次いで博多湾沿岸の102票に続いて、吉野ヶ里遺跡の86票」と出ました(西谷正「邪馬台国最新事情」(石油技術協会誌、2010年))。福岡県が実施したアンケートのためか、回答が九州に偏っています。

図表1

※西谷正「邪馬台国最新事情」(石油技術協会誌、2010年)より上位9地域と畿内を抜き出し

しかし、九州の中のいろいろな説を「九州説」と1つにまとめて、一強多弱というのは間違っていると思います。九州説の中で予選をして、近畿説と決勝戦をしなければならないわけではありません。

九州説は、山門説、朝倉説、吉野ヶ里説、宇佐説など、有力な説が多く、1つひとつが纏向説と対等です。近畿説が纏向説でまとまっていることと、纏向説の確からしさは関係ありません。

「邪馬台国は九州説と近畿説が有力とされている」という表現は正確ではなく、本来は「邪馬台国は吉野ヶ里説、山門説、朝倉説、宇佐説、纏向説などが有力とされている」と表現すべきでしょう。

ちなみに、2015年にJタウンネットが行ったアンケート調査では、読者925人から回答があり、邪馬台国は九州という人が54%、近畿が36%という結果でした。九州説が32都道府県で近畿説を上回りました(同率を含む)。

Jタウンネットはこの結果が意外だったようで「現代の学説では『畿内説』(近畿説)が比較的優勢となっているらしい。…多くの読者が『邪馬台国=九州』といったイメージを持っているのは、昔受けた『歴史の授業』が要因なのではないか」とコメントしています。

少なくとも、一般の人にとっては、近畿説が一強ということはなさそうです。

今回のnote記事では、九州説のうち、僕がある程度、根拠が納得できる4つの説を選んで、最近よく耳にする四国説とともに紹介したいと思います。

(最終更新2024/2/29)


宇佐説

まず、大分県宇佐説です。宇佐説は以下のように、なるほどと思う根拠がたくさんあります。魏の使節団の九州上陸は通説では唐津とされていますが、宇佐説は図表2のように、もっと東だとしていることが特徴です。魏志倭人伝の記述に最も忠実な説だと言えます。

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