田沢純一、経験という塊を携え、台湾球界へ

新聞紙面の片隅に見つけた。
「田沢、台湾へ」

野球独立リーグ、ルートインBCリーグに所属していた田沢純一投手がチームを退団、台湾プロ野球、「味全」と契約するという。少しの衝撃を覚えた後、新所属となるチーム名の読み方を調べることになる。

2020年のプロ野球シーンの中で、ごく僅かな期間ではあったが「田沢純一」の名前が頻繁に聞かれる時期があった。ドラフト会議の前後、BCリーグ所属の元メジャーリーガーが指名されるのかが、大きな話題となったことは記憶に新しい。だが、12球団のどこからもその名前が呼ばれることはなく、田沢のNPB入りの可能性は消えた。

今年7月の日本帰国後も、メジャー球団への復帰も模索していたと言われていた田沢の今回の決断は、プロ選手としてのキャリアにおいてどういう意味を持つのか、定かではない。メジャー、マイナー等、来季の米野球界の状況も見えない中で、限られた選択だったことも窺える。無論、34歳右腕の決断を、多くのファンは支持するはずだ。なぜならば、どこの国であれ田沢のマウンド姿を観続けたいからだ。

改めて思うのは、長年にわたってメジャーのマウンドに登り、2013年にはワールドチャンピオンにも貢献した投手が、なぜ日本ではドラフト指名を受けるアマチュア扱いとなるのか、だ。ドラフト会議直前のコメントで「指名を受けたら考える」と伝えられた田沢本人の意識も、指名を見送った球団側に感じるものがあったかも知れないが、やはりドラフトの対象となる事自体に違和感を感じてしまう。

一昔と比較するまでも無く、メジャー球団やアメリカ野球界と、日本球界との距離は時代と共に近づいていることは確かであり、選手、球団も含め、今後も両国間を行き来する機会は増えてくるだろう。何よりも選手の選択肢が増えている以上、受け入れる側のルールも、変わることが求められるはずだ。

「ドラフト会議後、この先も野球を続けるべきか長い期間悩みました」(埼玉ヒートベアーズ公式HPより)と、コメントを残している田沢だが、台湾球界という新たな環境で投げることを望んだ。味全ドラゴンズは八百長問題による解散を経て、昨年にリーグ再加盟、来シーズンよりリーグ参入が決定している。田沢はまだ30代も半ばであり、若くして海を渡りチャンピオンリングをはじめとするメジャーでの長年の経験を活かし、これまで多くの日本人選手がプレーしてきた台湾球界を再出発の舞台に、息の長いプレイヤーとしてその活躍を見届けたい。(佐藤文孝)

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