巨人終戦 王者に怯え、屈辱に塗れた球界の盟主

代打・亀井の打球が高く打ち上がると、そのまま内野手のグラブに収まりゲームセットが告げられる。巨人は第4戦も1対4で敗れ、昨年に続いて日本シリーズでソフトバンクに4連敗を喫した。セ・リーグ二連覇を成し遂げた「球界の盟主」が屈辱に塗れた。

終わってみれば、巨人ファン、そしてセ・リーグ球団関係者でさえも目を覆いたくなるような惨状となった。

初戦の菅野智之が6回4失点でノックアウトされエースで第一戦を落とすと、続く2戦目も先発の今村信貴が2回途中で4失点、6人のリリーフも計9失点で完全に打ち崩されることに。
福岡に移った3戦目、サンチェスが好投するも、打線の援護がなく9回2死までノーヒットノーランを許すなど、全く得点の気配も感じられずに完封負け。もはや、チーム全体から戦う意欲が失われていることが伝わってくるほどの覇気の無い戦いぶりだった。
そして第4戦。シリーズで初めて先制するも、ホークス柳田、甲斐に一発を許し逆転され、先発畠世周は2回持たずにマウンドを降りた。打線も中盤以降は沈黙、反撃の意欲もみせられぬまま、あっけなくこの日も敗れた。

シリーズ前の図式では、ソフトバンクへのリベンジを果たすべく、セ・リーグを2年連続で制した巨人の「逆襲劇」を期待していた。特に、過去2年連続でのカードは様々なドラマが繰り広げられている。
1992年、93年の西武対ヤクルトのシリーズは球史に残る激闘となり、何よりもヤクルトスワローズの打倒・西武ライオンズへの気迫が凄まじく、選手たちの戦いぶりとシリーズの内容に映し出されていた。92年に敗れていたヤクルトは翌年、ペナントレース前から西武を倒すことを目標としてシーズンを戦い、シリーズでも7戦の末、悲願を達成した。試合内容も劇的な展開の連続となり、2年に跨ってのツバメ軍団の究極のリベンジを果たしている。

今回の巨人というチームからは、昨年の敗戦のなど無かったかの如く、戦いへの意識の薄さ、そして昨年のリベンジという思いがまるで伝わらないプレーぶりだった。セ・パとのルール(DH製やCSの有無等)の違いや戦力差が語られ続けているが、何故か、目指している方向が異なるようにさえ、思えてならなかった。

最後に。

4試合で計5得点という、打線の不甲斐なさが4連敗の明らかな要因ではあった。特に主軸である岡本は、この戦いの中、まるで存在感を示すことが出来ず凡打に仕留められ続け、セ2冠打者がこのシリーズに記録した安打は、僅か一本のみだった。
さらに、岡本以外でも勝負どころでの覇気の感じられない打者のなんと多かったことか。3、4戦目の試合最終盤、代打で送られたにも拘らず際どいコースにバットを出せずに、三振に切って取られるシーンが繰り返されている。王者ホークスに対し、バッターボックスで怯えている様では、はじめから勝負は決していた。ファンの記憶に残る熱戦も起こりようがない。戦う気持ちを失ったプレーヤーは、日本一を競う資格など無いのだ。(佐藤文孝)

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