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大事なのは多様性

先月の話だが、また「ヒューマニエンス」の新しいエピソードを見た。

今回のテーマは「目」だった。また人生観が少しひっくり返った。

それは色覚(色を感じる能力)についての話だ。人間には3色型色覚と2色型の人がいる。半数以上の人が3色型色覚で、2色型の人は特定の色の見分けが苦手だったりして、色覚異常と呼ばれたりすることもある。

実はうちの長男は2色型である。緑と赤の区別が分からないときがあるのだそうだ。私の父もそうだったので、隔世遺伝だと思う。

長男の色覚異常が分かったときは少しショックだった。将来の職業の幅も普通の人より狭いらしい。本人を落ち込ませないように、「あなたの見てる世界はお母さんと違うんだね。面白いね。どんな風に見えるのか見てみたいな。」なんて言ってみた。まあ、実際に息子の目に映る色がどうなっているのか興味はあるので、半分は当たっているが。

でも、赤と緑の区別ができないことがあるのは何だかとても残念なことのように思えた。

今回の「ヒューマニエンス」では、人間にはなぜ2色型色覚と3色型色覚が混在しているかが語られていた。

初期の哺乳類は2色型だったそうだ。夜行性だったので色を細かく区別する必要がなかったからだ。しかし、その後人類の祖先は昼間の森で赤い木の実を採取するために3色型を獲得してこれが優勢になった。

ところが、その後何十万年たっても劣勢になった2色型は淘汰されず、一定の割合が保たれている。これはどういうことか。

番組では、その後、森を出て狩猟生活に入った人類に2色型の能力が役立ったからと説明している。

2色型色覚は色の見分けが苦手な反面、同じような色の中に紛れているものの形や輪郭などを見分ける能力が高いそうだ。森を出て草原で狩猟をするようになった人類にとって、草むらに潜む獲物(草食獣)や敵(肉食獣)をいち早く見つけるには、2色型の仲間が集団内にいた方が有利だったらしい。

つまり、人類は、採取が得意な3色型と狩猟に長けた2色型という異なる遺伝子を集団内にもつことで生き延びてきたのだという。

「多様性が生き物の生存の源泉」だと番組では語られていた。

急に2色型色覚を持つ息子が頼もしい存在に思えてきた。これは劣性遺伝ではない。私の家族は貴重な多様性を得たのだ。

多様性という点ではうちの家族はなかなかすごい。2色型色覚だけでも特別な長男は、分析能力なども優れている。次男は論理的思考にはめっぽう弱いが、直観力と行動力はピカイチだ。私は暗記が得意でつまらないことまで結構よく覚えている。夫はとりあえず何でもそつなくこなすバランス型だ。

私の家族がサバンナで狩猟生活をしていたら結構強いチームだったのではないだろうか。長男はすばやく獲物を見つけ状況分析をする。私は過去の経験から役立ちそうな情報を提供する。夫は皆から出た情報をまとめて戦略を決める。そして行動力に溢れた次男が切り込み隊長で獲物に向かうのだ。

現代に生まれてしまったことが少し惜しい。でも、がっかりする必要なない。時代は物凄い勢いで変化している。この先どんな能力が生きてくるかは全く分からないのだ。家族の能力が多様なのはこの先絶対に強みとなるだろう。

数年前、子供の学校の成績が悪くて心底悩んだ。しかし、長い人類の歴史から見たら、そんなのは全くとるに足りないことだ。大事なのは多様性。これまでも、これからも。

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