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子どもの送迎と仕事の両立はどうしたらよいのか。

10歳の娘さんを持つ働く女性に、送迎はどうしていたのですか?と聞かれました。なにか気の利いたことを言えたらよかったのだけれど、思い出すのは失敗談ばかり。

習い事の日を間違えて子どもたちを置き去りにしたり、送迎できない日にどうしても行きたいと言われタクシーを使ったら習い事の何倍もの費用がかかって泣きたくなったり、送迎付きの水泳教室にしたら時計が読めなくてバスに乗れないことが続いたり…

できるだけ自分の足で行けるところと思って近所のピアノ教室や英語教室を選んでいたのだけれど、高学年にもなるとやれることが増えてきて校区内では収まらなくなってきます。そんなに大変なら習い事なんてさせなければ良いのだろうけれど、小さいうちに興味の幅を広げてあげたいという思いがあって、当時はずいぶん頑張っていました。頼れる親戚もいない土地でひとり親でフルタイムの仕事をしながら子どもふたりの習い事の送迎をするというのは、現実的に無理な行為だったのだと今はわかります。


子どもに我慢させたくない、自分も我慢したくない。その思いの結果、長女の中学校進学と同時に実家のある札幌に生活の拠点を移しました。札幌なら公共交通機関が使えるので、行きたい場所に自分で行くことができるというのが、理由のひとつでした。
やれやれ、これで送迎から解放された!そう思ったにも関わらず、私は結局せっせと送迎することになりました。地下鉄で行けるのに。中学生になると急激に会話が減り、車の中で共に過ごす時間が貴重な親子の会話の機会になったからです。横並びで座った小さな空間は、反抗期の娘にとってポツリポツリと話をするのにちょうど良かったようです。仕事のある時は地下鉄で帰ってきてくれるので、必ず送迎しなければいけないというプレッシャーから解放されたのは大きなことでした。中学生になると時間も遅いので、仕事が中断されることも減りました。そこで、どうせお迎えに行くのならと、結局は自分も一緒に習い始めた私なのでした(笑)。中学生になると、親子で同じクラスに参加できるという、新たな発見です。


高校生になると、そもそも習い事をしなくなりました。大学受験に向けて、長女は予備校に入学することになりましたが、完全オンラインでの受講です。一方、学校までの道のりは地下鉄と徒歩で片道40~50分の道のり。帯広にいる娘の同級生たちは、自転車でどこまででも出かけています。公共交通機関のある場所に住んでいても送迎している親もいます。結局、子どもたちは状況に応じてたくましく生きるし、親はどこに住んでいても子どものためにと最善を尽くしてしまうようです。


良い学校にも良いご縁にも恵まれたので、札幌に移ったことは良かったと思っていますが、ニ拠点生活の大変さを考えると、帯広に居続けても何とかなったのかもしれない…と時折思います。帯広に公共交通機関は無いけれど、適度で温かな人のつながりがあります。一番の魅力は、消費地ではなく生産地であるという逞しさ。不便だからこそ、その中で愉しみを作り出して生きていく力が、地域全体にあるのかもしれません。


日本語もつたない幼い頃、中古のディズニー英語システムを買って教えていました。近所の英会話教室にも数年通わせました。残念ながらその成果は現れず、二人とも英語に苦手意識を持った中学生になってしまいました。でも、ひょんなことから留学を決めた長女は、みるみるうちに英語力を伸ばし、たった1年で英検3級が準1級に飛躍したのでした。結局のところ、本人が本当にやりたいと思うかどうかなんだなと、今は思います。送迎はできなかったけれど、留学したいと言ったときにそれを実現させてあげられたことが、長女にとって大事なことだったんだと思います。


次女が高校を卒業したら、芙美子家は完全に分散して私は帯広に戻るつもりです。その頃には、二人とも自分の力で生きていける素敵な青年になっていると信じられるからです。大切なのは、自分の道を生き抜く力が育つことと、自分が大切にされているという実感を持てていること。たくさん我慢をさせてきたし、私も我慢をしてきたけれど、この2点から言えば今のところ我が家は合格点だと思っています。失敗続きだった過去の自分に、そんんなに思いつめなくて良いよと伝えてあげたいものです。

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