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私立中学に入れて本当に良かったと思っている話

 長女が中学生になって約半年が経った。昨年のちょうど今頃、「私立もいいんじゃない?」という母の無責任な言葉を聞いた後、ちょうど帯広市内のホテルで説明会があったので興味本位で参加してみたのがきっかけだ。(その後母に聞いたら、そんなこと言った?と覚えていない 笑)

 今彼女は、重たい荷物を背負って、トボトボと行き来しているのだけれど、でも毎日学校が楽しくて仕方ないと言う。学校には、職員室の前に自習室がある。クーラーの効いた静かな部屋と、友だちとおしゃべりしながら勉強できるカフェのような空間がある。部活のない日は、たいていここで勉強して帰ってくる。先生たちはゆとりがあるから、いつでもわからない所を教えてくれる。夏休みの5日間の講習は1教科1000円だったから気軽に通わせられた。部活には週に一度だけれど専門のコーチが来てくれる。学校が楽しくて仕方がないという娘の笑顔を見ながら、私は安心して仕事に打ち込めている。

 自分が子供の頃は、下に妹と弟がいたこともあり、大学も含めて国公立に行くことしか考えていなかった。ひとり親で、たいした稼げてもいない私が、まさか娘を私学に入れようとは思いもしなかった。

 でも、ひとつ目の学校説明を終えて考えが一変した。私の、学校という価値観が崩れ去るような衝撃を受けたのだ。結局、帯広で開催された3つの学校説明会に参加した。どの学校も中高一貫だったからか、「高校受験のための勉強」ではなく「人間として成長するための勉強」を教えてくれると感じた。

 自分は、高校も大学も、当たり前のように受験戦争を通ってきた。競争心と向上心の塊だった私には向いていたとは思う。でも、私の通った中学は、公立にも関わらず札幌市内随一の学力レベルだったため、さすがに厳しすぎた。周りには医者や弁護士の子どもが多く、皆塾に通っていた。当時は相対評価だったため学内順位が内申点に直結する。同じ学力でも、周りの学校に比べて内心は2ランク落ちるという状況だった。高校入試は内申点と当日の得点の合算で決まる。行きたい高校に入るには、自分の学力以上の相当の得点を取らなければいけないという苦境だった。家にはお金がなく迷惑がかけられないと思っていた私は、頑なに塾に行かずに一人で勉強を続けた。

 偶然行った学校によってこんなにも差があるということに納得がいかなかった。もちろん頑張れるのは良いことだが、中学高校という多感な時期に、評価基準が勉強に偏っているというのはおかしいと思っていた。社会に出てみたら、評価基準は偏差値ではなかったし、どんなに勉強ができても結婚や出産を機に仕事を辞める友人が相次いだ。学校と社会とでは、求める能力や人物像が全く異なるのだと思った。

 確かに時代は変わっている。相対評価から絶対評価にも変わった。娘の小学校の授業で活発にディベートしている様子を見て驚いた。それでも、学校の変化と社会の変化のスピードは圧倒的に違うから、追いつくのは難しい。次女(5年生)の同級生で中1のお姉ちゃんがいるお母さんと話をした。学校の勉強が難しくてついていけず、毎日付ききりで勉強を見ている、と。価値観はそう簡単に変わるものではないと思った。でも、今は最終学歴だけで評価される時代ではない。

 高校受験や大学受験という枠に捕らわれる公立中学校と、未来を担う人間を育てようという私立中学校、私にはそういう風に見えた。私立は授業料が高いと思い込んでいたけれど、客観的に見てみると、塾や習い事に行かせることを考えたら決して高くないことに気が付いた。たとえ大学でお金をかけられなくなったとしても、自分の人生を自分で選び切り拓く力を、中高生で付けられることの方が大切だと思った。賢く生きれば、様々な奨学金や留学制度がある、チャンスの増えた時代でもあるからだ。大学は目的ではなく、自分らしく生きるひとつの手段でしかない。だからこそ、人生の目標を見つけ、生き抜く賢さを身に着けるべきは、大学を選ぶ前の段階だと思ったのだ。

 どの学校にも良さはあったけれど、共感できる理念と、その理念に向かった一貫した教育方針、娘の性格に合った空気感、という点で、母娘ともに意見の一致した女子校を目指すことに決めた。卒業生の紹介欄で巻頭で紹介されていたのは、大学に行かずにフリーで活躍している女性だった。公立ではありえないと思った。フリーで、中小企業で、大企業の管理職として、医師として、起業家として、NGO職員とし…ここなら、先生たちは彼女たちが自分らしい生き方を見つける手伝いをしてくれると思えた。

 受験を決めたのが6年生の10月で、勉強を始めたのは11月、親も本気にならないといけないと気が付いたのが12月。本当に大変だったけれど、あの時頑張れたことは、私たちにとって大きな自信になった。今は、部活も勉強も彼女なりに一生懸命取り組んでいる。よいお友だちもできた。保護者も前向きな人が多く、珍しく私もすぐに打ち解けられた。これから何があるかはわからないけれど、少なくとも今はこの学校に入れたことに満足している。

 でも帯広の同級生たちは、そんな世界があることを知らない。帯広には私立中学校がないのだ。仮に知っていたとしても、親元を離れて寮に入るというだけでも大変なことだし、周りは皆同じ学校に進学する中で、人と違う選択をするというのは、思春期の子どもたちにとって相当ハードルが高いことだ。

 次女は5年生から札幌の公立小学校に通っている。時期になると、連日のように私立中学校の案内パンフレットを持ってきた。受験する子も多いようで、自分はどうしようか、彼女なりに悩んでいるようだ。(どこにでも行かせられるわけではないのだけれど…)

 地方と都市の格差はこうして生まれていくのだと実感する。もちろん、公立が悪いというわけではない。その子に合っていれば良い。でも選択肢がないということは、やっぱり残念なことだ。私立だから勉強が良くできるということではない。難関大学に挑戦したい人はそういう学校を選べばよいし、運動が好きな子はそれができる学校を選べばよい、うちの娘は何も決まっていないけれど個性を伸ばしてくれる校風が気に入った。女子校というと決まって「お嬢様学校でしょ」と言われるけれど、ボーイッシュな子が多かったりと、返って個性豊かである。何事も思い込みは良くない。そして何より、学校には公共交通機関で通える。送迎ができないことによって可能性を狭めることがない。札幌には、多様な選択肢があった。

 私は偶然実家が札幌だったし、自分も半分は札幌にいられる段取りがついたので、今回この決断ができた。寮だったら、まだ行かせなかったと思う。そんなお金はないし、何より最も多感な時期だから手放すのはさすがに心配だから。だから全ての人に私立がいいと勧める気はない。もちろん、お金の問題もある。総合的に考えた場合に、私は”安い”と思ったけれど、もちろん公立よりお金がかかることに間違いはない。給食はないので、残念ながらお昼はお弁当を持参しなければならない。寮のお弁当を買うこともできるけれど、量が少ない(笑)ということでパンも買うとなると1食500円はかかる。

 それでもこれを書こうと思ったのは、たくさんの選択肢があるのだと地方の人に知ってもらいたかったから。もしも今の環境が合わない人がいたら、違う環境の方が子どもが伸びると感じる人がいたら、試しに説明会に行ってみてほしいと思ったからだ。

 下記が、昨年帯広で説明会を行っていた学校。ちらっと見たら、今年は既に帯広説明会が終わった所もあるようなのだけれど、もし興味があれば問い合わせてみてほしい。もちろん、これ以外にもたくさんの学校があるし、共学もある。男の子も、ぜひ。もちろんお金はかかるけれど、返還の必要がない奨学金や減免制度もある。はじめから諦めずに調べてみる、聞いてみる、私たち親にも賢さが必要だ。

札幌聖心女子学院

藤女子中学校・高等学校

北星学園女子中学高等学校

全ての子どもたちが、自分の力を信じてのびのびと育ちますように!

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