ふみきち
衝動

衝動

ふみきち

まだ5歳になったばかりの頃だったと思います。
私は、近所のスーパーへ一人でおやつを買いに行きました。
当時はまだ、幼児が一人でおやつを買いにスーパーへ行く事等珍しくもない時代でした。
スーパーで仲良しのお友達に会い、会計を済ませて、二人で外へ出て、横断歩道を渡ろうと、道端で手を上げて立っていました。
すると横断歩道手前で車が止まり、運転手が手を動かして渡るように促しました。
対向車が来ていました。
当然の事ながら、私達は動きませんでした。
すると運転手は窓から顔を出して、行きなさい、と言いました。
対向車は間近に居ました。
傍らに居たお友達の事は頭から抜けていました。
車が来ているのはわかっています。
私は飛び出しました。
ごん!という鈍い音。
薄れ行く意識の中で、あらら、という声と抱えあげられる感覚が有りました。
私ははねられた車の運転手の手で、近くの病院に担ぎ込まれたそうです。
幸いにして大きなケガは無く、後遺症も見られないまま今日に至っています。
ですが私は善良なるドライバーを加害者にしてしまったのです。

衝動。
ADHDに悩まされる当事者ならば、誰もが背負う重い十字架です。
感じるよりも、考えるよりも先に体が動きます。
気が付いたらそうなっていた、という事ばかりです。
そこに本人の意志はほぼありません。
全く思っていない言葉が口から飛び出すし、予想もしてない行動をとります。
自分の言動に冷や汗ものです。
何でそんな事するの?
何でそんな事言うの?
こちらが聞きたい位なのです。
責られればまだ言い訳も出来ます。
大抵は呆れて何も言えない、という空気になります。
失言や突拍子も無い行動で失った信頼や人間関係は数知れず。
そしてそれらを取り繕う為に、言い訳だらけで自らに鎧を着せてしまってもがいている当事者の方もいらっしゃるかと思います。

痩せた?と友人から聞かれれば相手に太った?と返したり。
飛び出しも、この5歳の頃が最初で、何度も繰り返しています。
学校の授業中に、気が付いたら椅子ごと違う場所に移動していた事もありました。
繰り返しますが、そうしたくてしているのではないのです。
自分でも、何でそんな事をするのか、全く訳がわからないのです。
だから、何でそんな事をするの!と怒られると、とても辛かったです。
したくてしている訳ではない、自分でもどうしていいかわからない。
そんな事、言える筈もなく。
周囲からすれば、奇行ばかりが目立つ扱いにくい子供だったと思います。

これを今読んでくださっている皆さん。
どうか、理解して欲しいです。
ADHDの衝動は、自分でコントロールできません。
当事者自身が、自らの奇行に頭を悩ませていると思います。
だから、教えてあげて下さい。
あなたのその言動は、この場にふさわしくないと。
それはあなたが悪いのでは無く、ADHDの衝動性のせいなんだよね。
落ち着いて、慌てなくていいから、と。
慌てなくていいから、という言葉で、衝動に任せた言動は減ると思います。
落ち着いて、慌てなくていいから。ゆっくりでいいから。
こんな言葉で、余裕を持たせてあげましょう。
私は自分自身にこの言葉をかけます。
声に出して言う事もあります。深呼吸する時もあります。
魔法の言葉です。
衝動に引きずられることはなくなります。

ADHDの当事者は、いつも今の事を考えるのではなく、一歩先に目が行ってしまいます。
今こうだから、次はこうして、ああ、あれもしなくちゃいけない、ああ、そういえば…。
頭の中はとても忙しいです。
そんな中で、目に付いた刺激にぱっと飛び付いてしまう事があります。
今、やっている事に集中する事。
次の事は次に考える。
それを意識できれば、衝動的な言動をする前に踏みとどまる事が、少しずつですができるようになります。
訓練は必要かと思います。
思った事をすぐに言わない事。
頭の中で文章にしてから言う事。
歩いている時は、目的地に行くまで寄り道しない事。
買い物は必要な物以外買わない事。
頭の中には、常に暴れ馬を力尽くで押さえつけている自分が居ます。
暴れ馬とは、ADHDそのものです。

衝動に負けて、自分を、周りを壊したくありません。

衝動とは、終生闘い続けるのだと思います。
大人になれば衝動性は消える、とよく言われますが、消える訳ではないと思います。
場数を踏んで、目立たなくなるだけだと思います。
衝動を野放しにしてしまうと、生きる道を壊してしまいます。
だから、押さえつけます。
自分で自分の首根っこを掴んで、勝手に飛び出さないように押さえ付けます。
動かない様に。
私はいつも体の何処かに、不自然に力が入っています。
拳を握りしめたり、歯を食いしばったり。
そうする事で、自分を押さえ付けているのです。

あなたの周囲に衝動性に悩まされている人が居たのなら。
許してあげて下さい。 
恐らく、その方自身が、とても苦しい思いをしていると思います。
どうしようもないのです。
出来ることなら。
慌てなくていいから、ゆっくりでいいから、という言葉と一呼吸置く時間をあげて下さい。
ADHD当事者はキャパオーバーにならなければ、大抵の事は普通にできます。 
やさしい言葉でキャパを広げてあげられたら、焦燥感から解放されて、衝動に身を任せる事も減るかと思います。

衝動に負けて、何もかも壊してしまわない様に。
衝動に、どうか、負けないで。

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ふみきち
40代の主婦。発達障害のことなど。