片付けられない

先日、Twitterで私は片付けられるのでADHD ではない、という呟きを見かけました。
これは危険な認識だな、と思ったので今回、このテーマを書いてみようと思いました。

ADHD と言えば、まず、片付けられないという言葉を連想される方も多いのではないでしょうか。
以前、片付けられないという言葉がタイトルの一部になっていて、ADHD の事を紹介している本が流行った時期もありましたね。
ADHD 当事者は片付けられない人だと思っている方も多いのでは。

そんなことはありません。

ADHD 当事者=片付けられない人ではないと私は思います。

確かに、ADHD 当事者は片付けが苦手な方が多いかも知れません。
でも片付けられないわけではありません。
何故、片付けが苦手なのでしょうか。

一つは片付け方がわからないというのがあげられると思います。
ADHD 当事者は、物事の段取りをしたり手順にそって行動するのが苦手であるという特性を持っている方がいらっしゃいます。
散らかった室内を見て、まず何をしたらいいのかわからないのですね。
片付ける、というのがそもそも何をすることなのかわからないのです。

こういう方には、周囲の方が片付けの手順書を作ってあげると良いと思います。
項目をできるだけ細かく区切って、順番に作業を進めていけば片付けられるようにわかりやすく書いてあげてください。
室内のごみを拾ってゴミ箱に捨てる→汚れた洋服は洗濯に出す→きれいな洋服はたたんでタンスへしまう、といった風に細かく手順をわけて書いていきます。
最初は面倒ですが、慣れてくると手順書を作れば片付けられるので、指示する側もされる側も楽になります。

当事者が自分で作るのも良いと思います。
面倒がらずに項目を細かくわけて、手順通りに片付けていけば、必ず終わりますよね。

もう一つは、分類できないという特性です。
ADHD 当事者は、物や情報を分類して整理することが苦手です。
目の前に散らかっている物が、そもそもゴミなのか、保存する物なのか見分けがつきません。
何でも大事な物に思えてしまって、必要かそうでないかを考えるのも面倒になってしまって、全部保管してしまっているという方もいらっしゃるのではないかと思います。

こうなると、物も情報も多すぎて、キャパオーバーになってしまいます。
キャパオーバーになると、物も情報も処理できなくなります。

ADHD 当事者は、キャパオーバーになると動けなくなります。頭も身体も、スイッチを切ったように動かなくなります。
パニックになってしまうこともあります。
キャパオーバーにならないように気をつけなければいけません。

まずは物を減らしましょう。
自分でどうしていいかわからない場合は早めにギブアップして、助けてもらうのがいいと私は思います。

助けが呼べない場合は、自力でやるしかないですね。

その場合の判断基準として。
まずはいるかいらないかで考えるのを止めてみましょう。
使ったか使ってないかで判断します。
例えば洋服なら、2年着てないものは処分にまわす、などですね。
数を決めておくのもいいかもしれません。
筆記用具などは3本だけ残して後は処分する、等ルールを決めます。

いつか使うかもしれない、は無いと思った方がよいでしょう。
空き容器や袋類等は積極的に処分されることをおすすめしめす。
ADHD 当事者の場合、できるだけ管理する物や情報を少なくすることが大事です。

決めたルールは書き出しておきましょう。
記憶に頼ると情報のキャパオーバーを起こしたり、短期記憶の弱さから、きれいさっぱり忘れてしまったりします。

物を分類するルール決めをして書き出し、片付けの手順書も作ったら。
まず室内の目につく所にその紙を貼っておきましょう。
その紙を無くしてしまったら、片付けるきっかけを失ってしまいます。

そして、早速取りかかりましょう。
先伸ばしにしないで、少しずつ片付けていきます。
散らかった室内を、一気に片付けてしまおうとは思わない方がいいと思います。
少しずつ進めましょう。
完璧にやろうと思わないこと。
ADHD 当事者の場合、イメージが先行してしまって、イメージ通りにいかずにくじけてしまうことがありますね。
モデルルームの様な部屋を維持できる人は、一般的に少ないと思います。
やり過ぎて疲れて投げ出してしまうことの無いように、程々にがんばれるといいですね。

周囲の方も、いつまでたっても片付かないと責めることの無いように。
ADHD の当事者はできないと思ったら、できることでもできなくなってしまいます。
周囲の方から責められて、自分は片付けられない人なんだと本人が思い込むことの無いようにしてあげて欲しいと思います。

毎日少しずつ片付けていけば、いつの間にか片付いた状態が当たり前になっていきます。
その状態が、キャパに収まっている状態だと考えれば良いと思います。
キャパオーバーにさえならなければ、ADHD 当事者はきちんと片付けられるのですから。
いつまでたっても片付かない、と感じているならば、恐らくまだ本人のキャパを超えて物が溢れているのだと思います。

片付ける際に、毎日使うものなどは定位置を決めましょう。
例えばよく探す物の代表として、鍵の場合。

これは、実際に私が使っている鍵のホルダーです。
こんな風に、見える様に収納することをおすすめします。
カゴ等は見えないので、入れた事を忘れてしまいます。見えないのは無いのと一緒です。
あと、カゴやトレーは他の物も放り込んでしまう危険性がありますね。
そうなると、分類できなくてあっという間にキャパオーバーです。

見える収納例のもうひとつ。お財布ですね。

テーブルの上に一例として乱暴に作ったので、雑で申し訳無いのですが。
マスキングテープで囲って、メモを貼っています。
舞台で役者さんがテープを貼って立ち位置を決めるように、物にも置場所を決めてあげましょう。
場所は棚の上でもデスクの上でも、構いません。
ですが、必ず帰宅した際に通る動線上にある場所にしましょう。目線より下が良いと思います。
必ずそこに置きます。
習慣付けば出掛ける前の大捜索は無くなります。

他にもカバンや書類等、置場所はそれぞれ決めましょう。床に置きっぱなしにしてしまうと、存在自体が目に入らなくなり、そのまま忘れてしまいます。
書類は封筒のまま保管しないで、封筒から出して広げてクリアファイルに入れましょう。
そしてファイルボックスへ入れます。
封筒に入れたままだと中身が何かすぐに忘れてしまいます。
見えないのは無いのと同じです。

ADHD 当事者だと片付けられないのではなくて、特性上片付けが苦手なだけで、片付けが上手なADHD 当事者の方もいらっしゃると思います。
逆に、片付けできない一般の方もいらっしゃると思います。
私は片付けられないからADHD かもしれないと思った、というのをよく聞きますが、必ずしもそうでは無いことをご理解頂けたら、と思います。
片付けられるからADHD ではないという風に思い込んで、ADHD である可能性を見逃されることのないように願います。

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