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身近にある不便をさがせ。

時代はマイナンバーである。

本日はじめてマイナンバーカードを用いて、コンビニで印鑑証明書を発行した。セブンイレブンいい気分。なんてすてきなコンビニエンス。こんな簡単に発行できちゃうものなのか。ありがたいことだよとほくほく顔で店をあとにしながら、ふと立ち止まる。

これ、便利な時代になったというよりも、いままでが不便すぎたのではないだろうか。おれたちはこれまで、不当な不便を押しつけられていたのではないか。というかそもそも、「印鑑証明書」なんて書類自体、簡略すべき過去の遺物ではないか。

そんな疑念を抱きながら歩いていると、思いは別方向へと流れていく。これは完全なテクノロジーあるあるで、人はどうも「便利に慣れやすい」という性質を持っている。スマートフォンひとつをとっても、いまさらいちいち「便利だなあ」「コンビニエンスだなあ」なんて感心しながら操作する人はほとんどいないはずだ。むしろ「スマホのない時代はどうしてたんだろう?」なんて疑問を抱くほど、手にした便利に慣れすぎている。スマホのない人生のほうがずっとずっと長いはずの、ぼくでさえも。

便利とは本来、「不便の解消」であるはずだ。そこに不便な障壁があるから、それを壊す。流れをよくする。そのようにして便利が生まれるはずなんだけれども、このところどうも、なんら不便を感じていないプロセスの一部を省略したのちに「ほらほら、便利でしょ? あたらしいでしょ?」と押し売ってくるサービスが多い気がして、なんとなくモヤモヤする。

「なんとなく便利っぽいもの」をつくることは、さほどむずかしい行為ではない。技術的な足し算だけで、それはできてしまう。ほんとうにむずかしいのは「隠れた不便をさがすこと」であり、それを発見できればもう、十分すぎるほどのクリエイティブなのだ。

いま、自分が感じてる不便はなんだろう?

——これはあらゆる企画に通じる問いだと思うのだ。