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完全よりも完成を

きのう、ある方面で世界的に大活躍されている方に取材していたとき、彼の口から「人間は不完全なもの」ということばが出てきました。本としてかたちになるのは来年なので、備忘録を兼ねて、こまかい文言は差し替えつつ書いておきます。

人間は不完全なものである。だから仕事に「完全」を求めてはならない。求めるべきは「完成」であり、いくつもの不完全な「完成」をくり返すなかで、ようやくひとは「完全」への階段を登ることができる。……そんなお話でした。

この、人間は不完全なものである、という出発点。すごくいいなあ、と思うんです。自分に対しても、他人に対しても、まずは「われわれは不完全なものである」から出発する。そうすれば、いろんなヒントが見えてくるんじゃないでしょうかね。

たとえばぼくらの仕事の場合、筆が止まっているときの大抵は、規模のちいさな「完全」をめざしてるんですよね。完全を求めるから書けない。

とはいえ、ここで「とりあえず、粗い原稿でいいからバーッと書いちゃいなよ」というのも違う話で、原稿って、粗く書いたら粗いまま固定化しちゃうんです。いくらあとになって山のような直しを入れても、一度粗く書いてしまったものは、どうしても骨格の粗さや杜撰さを残したまま、表面だけが磨かれる。編集者がよく言う「とりあえず書け。粗くてもいいから書け」は、かなり危険なアドバイスだとぼくは思っています。

そこでヒントになるのが「人間は不完全なものである」、わたしもあなたも不完全なものである、という言葉じゃないかなあ、と思うんですね。わざわざ雑に仕上げる必要はない。けれども完全なんてあるわけがない。つまりは身の丈の、不完全なわたしによる最善をめざしていこう。

ちょっと自分でも整理中の、雲をつかむような話になりましたが、そんなこと思っています。

Thank you!
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ライター。バトンズ代表。最新刊『取材・執筆・推敲』。その他著書・共著に『嫌われる勇気』『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』『20歳の自分に受けさせたい文章講義』など。週日更新しています。http://www.batons.jp