見出し画像

フライトジャケットの問いかけ。

携帯電話にインターネット。さらにはカーナビゲーションシステム。

これらのイノベイティヴなテクノロジーはみな、軍事技術を転用して開発されたものだと言われている。「ルンバ」に代表される家庭用お掃除ロボットもまた、地雷探知ロボットをベースに開発されたものらしい。もっと身近なところでいうと映画『トップガン』をきっかけに大ブームとなったフライトジャケット。あるいはイギリス陸軍が塹壕戦のためにつくった、防寒と防水の両方を兼ねるトレンチコート。イギリス海軍によるピーコート。これらもすべて、軍事技術の転用だ。

そして MA-1 などのフライトジャケットが顕著なのだけど、軍事目的につくられたものは機能性に優れている。フライトジャケットは、ほんとうに軽いしあたたかい。さらにはダウンジャケットのように羽毛を使うこともせず、経済性にも優れ、量産に向いている。

で、インターネットやカーナビ(GPS)の出発点が軍事技術だったという話になると、多くの人は「軍事分野にはその時代の最先端技術が結集し、膨大な予算がつぎ込まれるから」云々、みたいな話をする。

けれどもぼくは思うのだ。

たしかに予算の問題や、国家プロジェクト的なスケール感も関係しているのだろうけど、少なくともフライトジャケットのレベルで言えばそれは違う。フライトジャケットを生んだのは、「切実さ」であり、「真剣さ」なのではないかと。

つまり、フライトジャケットを開発した人たちは、「切実に」軽くてあたたかく、耐火性にも優れたジャケットを望んでいた。そして「真剣に」それをつくった。ただそれだけじゃないかと思うのだ。


ひるがえって、自分の仕事を考える。そこに「切実さ」はどれだけありますか、と問いかける。そこに「真剣さ」はどれだけあるんですか、と問いかける。フライトジャケットをつくった人たちくらい、切実だったり真剣だったりしていますか、と問いかける。

切実や真剣がまざらないと、仕事はおもしろくならないと思うのだ。