以前、映画監督の李相日さんにインタビューしたときのこと。
たのしかった取材の最後に「映画監督をめざす10代の読者にメッセージをお願いします」とリクエストした。すると彼は、こんなふうに語りはじめた。
そして彼はこう続ける。
取材したのはもう15年くらい前なんだけど、いまでもこのときのことばは折に触れて思い出す。いちばん大事な教訓が、ここで語られている気がする。
ものすごく大雑把な話をすると、世のなかには「やれと言われてもやらない人」と「やれと言われてやる人」、そして「やれと言われなくてもやる人」の3種類がいるのだと思う。
たとえばぼくの場合、「片づけ」というジャンルにおいては「やれと言われてもやらない人」だ。学校の勉強についてもかなり「やれと言われてもやらない人」だったように思う。
そして映画監督になりたいと思っていた学生時代の自分を振り返ってみたとき、李相日監督の言うように自発的に、無尽蔵に、じゃんじゃん脚本を書いていたかというとまったくそんなことはなく、もっぱら映画鑑賞に時間を費やしていた。映画制作については「撮るのは金がかかるしなあ」とか「機材がないもんなあ」と先延ばしにしていた。いまになるとわかるのだけど、その時点でもう、ぼくには映画の才能がなかったのだ。
才能ってことばについてはいろんな定義があるだろうけれど、入口にあるのは「やれと言われなくても、それをやってしまう」じゃないのかな。まあ、職業としてこなすうえでは「やれと言われてやる」でも十分だと思うけど。