見出し画像

わたしの好きな料理。

好きな料理について考える。

いま、ぼくがいちばん好きなのは、会社近くのお店で食べるおすしである。ご主人のお人柄もあわせて、たぶん断トツに好きだ。しかしそれは「好きなお店」であって、好きな料理とは違う。おいしくないおすしは、まったくおいしいものではない。食わなきゃよかったと思うおすしも、正直ある。

かつ丼、と思っていた時期は長かった。なんとなく入ったお店で、名店でもなんでもないおそば屋さんで、空腹にまかせてかつ丼を頼む。……後悔した記憶は、ほとんどない。衣だらけのペチャカツであっても、「肉、ぜんぜんねえな」などと毒づきながらも、それなりにおいしく食べる。

とはいえ最近は、脂の多いかつ丼を食べるとわかりやすく胸焼けを起こすようになってしまった。むかしほどよろこんでかつ丼一直線とはいかなくなってきた。


それできょう、お昼を食べながら思ったのだけれども、いまぼくがいちばん好きな料理は、豚汁なのかもしれない。

過去の記憶をさかのぼってみたとき、まずい豚汁というものを食べたおぼえがない。屑肉のような、バラ肉の切れ端くらいの豚しか入っていなかったとしても、それはそれでちゃんとおいしい。大根やにんじん、ごぼうなどの根野菜がたくさん入っていて、豚の甘みや脂も浸みだしていて、七味唐辛子をたっぷりふりかけて、これからの季節はとくに身体がぽかぽかよろこんでくれる。ああ、今後好きな料理を訊ねられたときには、胸を張って「豚汁」と答えよう。豚汁ひとつあれば、ぼくは少なくとも同量以上のごはんをやすやすと平らげられる。


しかし、ここでひとつ難問が立ち塞がる。福岡県出身のぼくは、豚汁のことを「ぶたじる」と読むのだ。いまの状態で「好きな料理は?」と訊かれれれば、まず間違いなく「ぶたじる」と答えるのだ。

「ぶたじる」は、いかにも音が汚い。人生の半分以上を東京で暮らしているのだから、ぼくも早く「とんじる」の住人になりたいのだけれど、こういうことばは日常会話のなかで頻繁に使っていかないと、なかなか上書きされないものだ。


ちなみに福岡では「肉まん」のことも「ぶたまん」と言い、コンビニで購入した際には酢醤油の小袋がついてきます。