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あなたはずっとそうだった。

太ったなあ、と思う。

この10年以上のあいだ、いつだってそう思っている。写真を撮るたびに、いや正確にいえば写真に撮られるたびに、そう思っている。そこに写る自分の姿を見て、太ったなあ、と思っている。

10年以上にもわたってそう思っているということは、自分のなかでの基準点は、15年前や20年前に設定されているのだろう。あるべき自分像は、30代の前半あたりに置かれているのだろう。当時も痩せているつもりなんてさらさらなかったけれど、おのれの外見を好いたおぼえも皆無だけれど、どうしても「あのころ」と比べる自分がいるのだ。

とはいえ、こうして太っただのダイエットしなきゃだのと嘆くおじさんの話なんて、誰もよろこんでくれない。それはおじさんの容姿なんてどうでもよろしい、というシンプルな理由によるものだけでなく、「いまさらなに言ってんだ?」の話でもあるからだ。

つまり、当人はひさしぶりに測った体重や、人間ドックの結果、また不意に撮られた写真に写るおのれ、などに対して太っただの痩せなきゃだのと騒いでいるのだけれども、周囲にいる人からすれば「あなた、ずっと前からそうじゃん」な話であり、人間という生きものは昨日や今日で太るわけではないのである。

そしてまた、「自分のことは自分がいちばん知っている」なる言説は半分ばかり不正解で、自分のことをいちばん知らないのが、ほかならぬ自分だったりするわけだ。

犬の散歩は毎日してるんだけどねー。ジョギングならともかく、散歩で痩せるわけじゃないんだよねー。それは何時間歩いても。