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場慣れするということ。

この人ってこんな顔だったっけ?

テレビを見ていて、ときどき思う。俳優さんよりもむしろ、連日カメラの前に立っているであろうアナウンサー職の方々に多い。当然ながら美容整形の結果などではなく、撮影用メイクの結果だけとも思えず、顔の印象がうすいというか、顔が安定しないタイプの方々が、世のなかにはいるのである。

顔が安定しないとはどういうことか。「よくある顔」とは少し違う。もしかするとそれは表情の「こわばり」に原因があるのかもしれない。つまり、極度の緊張で顔がこわばっているときと、ある程度のリラックスができているときと、ものすごくリラックスできているときと、それぞれに表情が違う。ゆえに顔が安定せず、印象に固着しにくい。

多くの人がそうであるように、ぼくは写真を撮られることが苦手である。そしてさらに、テレビカメラが苦手である。片手で数えられるほどでしかないものの、過去に何度かテレビ出演したことがあり、そのビデオを見ると見事に表情がこわばっている。「目が笑ってない」のお手本みたいな顔で、懸命に口角を上げている。

なんの話だっけ。

そう、緊張とこわばりの話だ。じつは文章においても緊張とこわばりはあると思っていて、へんな緊張のなかで書いた文章は表情がこわばり、結果としてガチガチの、印象に残りにくいものになってしまう。

のびのびと書かれた文章を「表情が豊かだ」なんて指すことがあるけれど、あれは比喩でもなんでもなく、書き手のリラックスこそが文章に表情をもたらし、その人らしさをもたらすのだ。

じゃあ、リラックスして書くにはどうしたらいいか。

これも俳優さんやアナウンサー職の方々と同じで、基本は場数をこなすことである。しかも、ただたくさん書くのではなく、人目にさらされ、評価の対象となるような場で、何度も書き続けることである。

そうすれば場慣れという名の自信が生まれ、リラックスした状態で自分の文章を書くことができる。

自信の中核にあるのは「おれってすごいだろ」的なうぬぼれではなく、もっとシンプルな「場慣れ」じゃないかと思うのだ。