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勝ち上がることのよろこび。

去年のサッカーワールドカップ・ロシア大会を思い出す。

ハリルホジッチ監督の解任、西野監督の就任、史上最低といっても過言ではなかった前評判、そして大迫ハンパないグループリーグ突破、ジェットコースターのようだったベスト16でのベルギー戦。ずいぶん昔のことのようだけれどあれ、ぜんぶ去年の出来事ですよ。で、どこが優勝したか憶えていますか。決勝戦のカード、憶えていますか。フランス対クロアチアですよ。ね、超新星のロケットスター、エムバペ。度重なる延長線を勝ち抜いてきたクロアチア。敗れながらもMVPを獲得したモドリッチ。思い出してきましたか。日本戦のこと以外でいうと正直、ぼくは忘れかけていましたよ。


それで来年のいまごろには東京オリンピック・パラリンピックも終わり、そこで誕生したヒーローやヒロインたちに手を振り、もしかしたらラグビーに燃えた今年のことを忘れてしまうのかなあ。いや、忘れないだろうし、忘れたくないよなあ。

ぼくがはじめて真剣に観たサッカーワールドカップは1986年のメキシコ大会なのだけれど、やっぱりあの大会は(マラドーナの大活躍もあって)ぼくにとっては特別すぎるほど特別なもので、ファウル判定の厳しくなった1990年イタリア大会以降のワールドカップとはちょっと違ったものとして濃く、記憶に残っています。

そしてはじめて(日本戦以外も含めた)ほぼ全試合を観戦していった今回のラグビーワールドカップ。ぼくはずっと忘れないんじゃないかなあ。こんなに興奮して、感動して、毎試合あたらしく誰かのファンになってるなんて、大会前には想像もできなかったよ。


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高校3年生のころ、うちのサッカー部は県大会で優勝した。県大会の決勝が9月か10月くらいで、全国大会は翌年1月だった。全国大会までの数か月間ぼくがいちばん嬉しかったのは「まだ練習できていること」だった。福岡県の3年生で、いまも引退せずに練習できているのは俺たちだけだ。あの強豪校のあいつらも、あの常連校のあいつらも、もう引退してしまって練習することもできない。きょう、このとき、この時間、ボールを蹴ったり走ったりできていることは、最高の栄誉だ。

そんな小さくとも大きなよろこびを実感しながら、全国大会までの約3か月を過ごした。


いま、イングランドの面々と南アフリカの面々は、最高に気持ちよく「このメンバー」での練習に取り組んでいるだろう。もちろん3位決定戦を控えたニュージーランドとウェールズにもその気持ちはあるはずだ。

負けたら終わりのベスト8。負けても続くベスト4。

両者のあいだには、順位以上に贅沢な「あと2試合」「あと2週間」という時間とチャンスが横たわっている。

サッカーもラグビーも、いつかその壁を越えてほしいなあ。