見出し画像

しばらくぶりの、おおきな問い。

今年も確定申告が終了した。

と言うとフリーランス界隈の方々から嫉妬と羨望、ことによれば憤怒のまなざしを一身に浴びそうであるが、違う。ぼくはなにもやっていない。作業のすべては税理士の先生にお願いしている。「すげー」とか「おれなんてまだ領収書の整理も」とか言われるような話ではないのだ。すげーのは税理士の先生であり、ぼくはすごくも偉くもないのである。

しばしば日本人は、税金の使い途に無関心だと言われる。さらにそれが日本人の政治参加意識を希薄化させていると言われる。そして税金の使い途に関心を払わないのは、源泉徴収のおかげだと言われる。つまり企業が従業員の税金を(給与から天引きするかたちで)代納しているからだと言われる。そこで源泉徴収の制度を廃止し、すべての国民に確定申告を義務付ければいいと訴える方がいる。そうすれば自分がどれだけの税金を払っているか実感できるし、結果として税金の使い途にも厳しい目を持つはずだと。

理屈としてはわかるものの、そうなのかなあ、とぼくは思う。なんと言ってもぼく自身が、「確定申告」と「税金の使い途」を結びつけて考えたことがないからだ。ぼくにとっての確定申告とは文字どおりに国民の義務であり、さらにいえば「払うものは払ったんだから、ぼくのことはほっといてね」の判を押す儀式である。

じゃあ政治にまったく無関心なノンポリさんなのかというと、それもすこし違う。投票所以外の場所でおのれの政治的立場を表明する機会はほとんど持たないものの、新聞は政治面と国際面を中心に読むし、そのときどきで政府や与野党の政治家さんたちに思うところはある。

2022年2月24日、世界に衝撃を与えたロシアによるウクライナ侵攻が始まった。欧米は72時間でキーウは陥落すると、ゼレンスキー大統領に脱出用のヘリコプターを準備していたという。しかし、大統領はこれを拒否、翌25日に「我々はキーウにいる。独立を守るために戦う」と世界に宣言した。このとき大統領を囲んでいた側近たちが、NHKの取材に応じた。ウクライナ、そして、世界の運命を変えた緊迫の舞台裏に迫る。

NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」

きのう、録画していたこの番組を見た。ゼレンスキーをはじめとする政治家たちの決断はもちろんのこと、たくさんの国民による、たくさんの決断が、克明に描かれていた。徹夜明けのボロボロ状態だったこともあってか、ボロボロと泣いてしまった。「これが日本だったら」とか「これが日本人だったら」とか「日本の政治家だったら」とか、おおきな主語では考えない。ただ「これが自分だったら」と考えた。こんなにでっかい問いを突きつけられたのは、ひさしぶりな気がした。

3月2日の午前1:10(つまり3/1の深夜1:10)から再放送とのこと。たくさんの人に見てほしい番組だと思いました。『NHKスペシャル』の歴史に残る回だと思います。