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ロングセラーの処世術。

出前で、特のり弁当を注文した。もうすぐ届くところである。

のり弁といえば、ごはんの上におかかを敷いて、その上一面にのりを敷きつめて、白身魚のフライ、ちくわ天、場合によっては鶏のからあげ、それからきんぴらごぼうに昆布の佃煮などを載せたお弁当である。あれを白身フライ弁当と呼ばせず、のり弁当と呼んでいるところがいい。

白身フライ弁当であった場合、メイン食材は当然白身フライだ。その味にはそれなりの説得力が求められる。ハンバーグ弁当、からあげ弁当、崎陽軒のシウマイ弁当、いずれもそうだろう。

しかし、のり弁当を名乗っているかぎり、白身フライは「おまけ」である。ちょっと豪華な「ごほうび」である。少しくらい油っぽいフライであってもかまわない。なんといっても「おまけ」なのだし、隣にはちくわ天まで載っているのだ。

もっとも、ぼくたちはのり弁の白身フライを見て「わあ、のりを注文したつもりなのに、白身フライまでついてるぅ」と歓喜するわけではない。それが載っていることなど、百も承知で買っているし、むしろそれを目当てに買っている。

とはいえ白身フライ弁当と名乗らず、ちくわ天弁当とも名乗らず、ミックスフライ弁当なんて調子に乗らず、実直に「のり弁当」を名乗っている彼が、ぼくは大好きなのだ。その処世術を見習いたいのだ。


のり弁のような男に、わたしはなりたいのである。