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その文章はどうして硬くなるのか

藤子不二雄Aさんの傑作『まんが道』に、こんなシーンがあります。

筆が遅い自分たち(藤子不二雄)に比べて、「天才」手塚治虫と石ノ森章太郎は、ありえないくらいに筆が速い。しかも雑に描き飛ばしているのではなく、密度も濃いのに速く、うまい。

その理由について『まんが道』では、このように語られています。

「結局、速い、遅い、の差は、線を引く時の自信の差なのだ!」
「自信と集中力を持って引く線は、速くて、きれいなのである!」

『まんが道』(藤子不二雄A/小学館)より

問題は、ここでの「自信」の正体です。

きっと、これは「おれは絵がうまい」といった、技術に対する自信だけではないでしょう。大切なのは、ペンを入れる前から完成形が見えているかどうか。その脳裏にありありと映る完成形への自信が、迷いのない線を走らせるのだと思います。

文章を書くときも、完成形が浮かんでいると、当然ながら筆は速くなります。けれども、気持ちのいい文章は「音」と「意味」の両方に優れていることが必要で、その完成形はメロディのように浮かぶことが多い気がします。

なのでぼくは集中して原稿を書くとき、ぱくぱくと口元を動かしながら、声に出さない音読をして、口のなかで清書しながら、指をぱちぱちタイピングしています。

逆にいうと、読み返して「硬いなあ」と思う文章は、「意味」ばっかりが書かれていて、そこに音符が欠けているのです。メロディが聞こえないのです。

はい。いま推敲中の原稿がまさにそれだったのでした。

毒を食らわばサラダで。
200
ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

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興味ほいほい
興味ほいほい
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コメント (3)
とてもとても為になりまする。なるほど。これはいいことを知りましたよ。ありがとうございます。
どんな言葉も口ずさんでみることって大切ですよね。日本語は特に、5や7の音節を意識するだけでリズミカルになりますし。
そうですね。私も障害特性からか変に文章が長くなるときがあるので気をつけたいところです。
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