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売れるということの大切さ。

誤解を招きやすい話になるけど、ずいぶん前のこと。
担当した本が、ものすごく売れた年があった。

40万部の本、30万部の本、20万部の本、10万部の本がいっぺんに重なり、ほかにも3〜5万部の本がいくつかあり、わあわあわあ。これ合計したら100万部をらくらく超えちゃうじゃないか。という年が、いきなりやってきた。

いちばん最初に考えたのは、「調子に乗っちゃいけない」だった。

なぜならこれは、「オレというライター」が売れたわけじゃない。オレというライターが「売れっ子になった」わけじゃない。ただ、オレというライターが関わった「本」が売れた、それだけの話なのだ。鼻を伸ばすことをせず、腰を屈めて、これからも実直に生きていこう。そう誓った。


けれども本が売れ、お金が入り、しばらく生活の不安から解放されると、結果としての「断る仕事」が増えていった。「食いつなぐ仕事」から離れ、「関係を保つための仕事」からも離れ、自分がほんとうにやりたいと思っていた仕事に、たっぷり時間をかけて取り組めるようになった。


売れるって、大切だ。

あそこで「売れる」という契機がなかったら、たとえば文章術の自著を書くとか、ずっとやりたかったアドラー心理学の本に取り組むとか、そんなことはできなかったと思う。ましてや会社をつくるなんて、ありえなかったと思う。

貨幣とは鋳造された自由である」というドストエフスキーのことばは、いろんなところで引用してきたけど、お金だけじゃない「売れること」の大切さ。もう少しうまくことばにできないかなあ。


「クライアントからの無理難題は断れ!」 元電通コピーライター・前田さん

弁護士ドットコムに掲載されたこの記事を読んで、「断ること」の大切さを考えているうちにこんな話になりました。