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わたしにとってのハンマー投げ。

あれは異種格闘技戦的な発想なのだろうか。

スポーツファンのあいだではしばしば、「もし、あの人がほかの競技をやっていたら?」が話題になる。もし、イチローがサッカーをやっていたら。もし、中田英寿が野球をやっていたら。もし、室伏広治が格闘技をやっていたら。もし、山下泰裕が大相撲をやっていたら。……そういう妄想を膨らませては「○○界の歴史を塗り替えていたはずだ!」「とてつもない世界チャンピオンが生まれていたはずだ!」みたいに盛り上がるのが、正しいスポーツファンのありかたではないかと、ぼくは思う。大山倍達先生にいたっては、虎や熊との「もし戦わば」まで妄想されておられるのだ。


とはいえ、たとえばイチロー選手がサッカーをやっていたとして、そりゃあすごい選手になったとは思うけれど、野球の世界でそうであったように名実ともに世界一、あれやこれやの世界記録保持者、みたいな存在にまで駆け上がったかどうかは、誰にもわからない。また、あきらかに「日本人最強の格闘家」になれそうな室伏広治さんにしたって、いろいろ言ってもハンマー投げという競技だったからこそ、オリンピックの舞台でメダルを獲得するまでにご自身を高められたのだと思う。少なくとも、イチロー選手が「サッカーをやっていたら、もっと活躍できた」はありえないし、室伏さんだって、山下泰裕さんだって、貴乃花や白鵬だって、「もっと」活躍できた舞台はないと思うのだ。

それで本題。

副業が奨励される世のなかになって、あれこれチャレンジする人が増えている。その流れ自体は、とてもいいものだと思う。けれども、そうやって出かけて行った先で「本業以上の自分」に出会える可能性って、意外と少ないんじゃないかなあと思うのだ。

好奇心のおもむくまま、いろいろ試すことはしたい。ド新人になれる場を、いつも持っておきたい。ただ「本業以上の自分」にはなれないし、そんな自分はどこにもいない。本業の自分を高めていく気持ちを忘れちゃダメだなあと、ぼくは自分に思っている。