得する仕事、損する仕事
むかしむかし、そんなに遠くはない20年くらいむかし。
都心の喫茶店は、くたびれたサラリーマンのオアシスだった。わずかなひまを見つけては喫茶店に立ち寄り、一服する。スポーツ新聞やマンガを手に取り、煙草数本分の休憩をとる。ルノアールあたりでは、本格的に熟睡している営業マンも多かった。
いま、都心の〝カフェ〟は、はたらきびとのオアシスだ。Wi-Fi が飛び、電源が拾え、コーヒー1杯で何時間も仕事ができる場所。灰皿やスポーツ新聞の消えた〝カフェ〟は、ワーキング・スペースとして重宝されつつある。
新幹線もしかり。飛行機もしかり。駅のホームもまたしかり。かつて、なんなら缶ビールでもあけてリラックスするはずだった空間が、はたらき場所になっている。考えてみよう。ぼくは、あなたは、あのひとは、そんなにも忙しいのだろうか?
……たぶん答えは半分半分だ。忙しいのが半分、得をしたいのがもう半分。
昼下がりのカフェでアイスコーヒー飲んでるあいだ、ついでに一本、仕事をやっつけちゃったぜ。得したぜ。新幹線で移動してるあいだ、せっかくだから企画書つくっちゃたぜ。得したぜ。駅のホームで電車を待ってるあいだ、やることないから仕事のメールを返しちゃったぜ。得したぜ。
こうした、得だか損だかよくわかんない「得したぜ感」が、ぼくらを追いつめ、日常のあらゆるすき間に仕事を注入しているのではないだろうか。
2泊3日、久しぶりに休みをとってみて思ったのは、東京にいて完全休養をとるのは自分には無理だなーということ。仕事をすることが「損したぜ」に感じるようなリゾート地に行かないと、なかなか休めないですね。
明日から年末まで、またがんばります。