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厚揚げをめぐる冒険。

糖質制限、という考え方がある。

いまやダイエットにおいて主流の発想、または思想と言ってもいいだろう。ぼく自身、本格的なダイエットに取り組んでいるわけではないものの、そこにあるカロリーよりも糖質を気にしながら、食事を選ぶようになっている。ただし各食品の糖質に注目していると、ときおり理解不能な数値に遭遇することがある。その代表格が、厚揚げだ。

食品ごとの糖質が記載されたサイトに飛んでみると、たとえば100グラムの豆腐に比べて100グラムの厚揚げのほうが、糖質は低いらしい。

ぼくの知識が間違っていなければ厚揚げとは、豆腐を揚げたものである。それゆえ厚揚げ豆腐、との別名もある食べものだ。調理の際には「油抜き」という工程が推奨されるほど、油がある。素手で握ればちゃんとべたべたになる。一方で豆腐は、健康食やダイエット食の代表格として語られる食材だ。油をつかったりしていないし、その証拠に豆腐に醤油をかけても油は浮いてこない。カロリー脳で考えるなら、豆腐のほうが太らない食材に思える。

ところが厚揚げのほうが糖質は低く、糖質制限のめがねをかければ厚揚げのほうが「太りにくい」食材になるというのだ。

そのからくりを解き明かす鍵が、糖質を算出する際の数式にある。厚揚げの謎を追うまで知らなかったのだけれど、糖質とは「糖質=炭水化物−食物繊維」の数式によって算出されるらしい。そして厚揚げは、豆腐に比べてたくさんの食物繊維を含んでいるため、結果的に糖質が低くなるというのだ。


じゃあ、と愚脳をはたらかせてぼくは思う。

なにをどんなに食おうと、食物繊維サプリをがんがんに飲めば、結果チャラじゃないか。おにぎりもカレーもカツ丼も、超・低糖質食品になるじゃないか。サンドウィッチマン伊達さんの「カロリーゼロ」理論が、科学の力で現実のものとなってしまうじゃないか。

よろこび勇んで食物繊維のサプリメントを購入した。

説明書きによるとこのサプリ、1日の推奨目安量は10粒なのだという。そこで少し「10粒は多いなあ」となるのだけれども、10粒に含まれる食物繊維は3グラムなのだという。それで厚生労働省が推奨する食物繊維の摂取量は、男性で1日あたり「21グラム以上」なのだという。つまりこのサプリメントだけでカバーしようと思うなら、1日70粒も飲まなきゃならん計算になる。それはサプリメントというより、もう食事だ。腹が満たされる量だ。

というわけで、世紀の大発見くらいのつもりで買ったサプリがまさしくただの「健康補助食品」に落ち着き、また1日10粒飲んだところで身体に変化は見られず、いまだもって「豆腐よりも厚揚げのほうが太らない」の真偽がよくわからないままなのである。

ま、厚揚げのほうが好きだから厚揚げ食べてますけど。