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トーク、トーク、トーク!

きのうはひさしぶりに、トークイベントに参加させていただいた。

ひさしぶり、とは『嫌われる勇気』関連の講演会・トークイベントという意味だ。意外に思われるかもしれないが、ぼくはこの本をテーマにした日本国内での講演会に、おそらく5回も出席していない。登壇することがあるとすれば共著者・岸見一郎先生と一緒の席だけで、ぼく個人に「アドラーの話をしてください」とか「嫌われる勇気の話をしてください」といったお誘いがあった場合は、すべて丁重にお断りしている。今後もまた、そうするつもりだ。

人前に出ると緊張しちゃうとか、本業が忙しいとか、講演屋さんになりたくないとか、挙げればいろいろとあるのだけど、いちばんおおきな理由は「語るべきことを持ち合わせていない」である。

たとえばぼくは「アドラーはこう言っています」の話をすることはできる。あるいは「アドラーの研究者である岸見一郎先生はこう言っています」の話もできるし、「アドラーの直弟子にあたるドライカースは、またウルフは、こう言っています」の話だって、たぶんできる。もう少し俯瞰的に、「世界の心理学・精神医学界において、アドラーはこのような立場に置かれ、こう扱われています。これらの人々に、こんな影響を与えています。あの流派もじつは、アドラーの影響下にあります」もまた、語れるだろう。それはもう本をつくる過程において、相当に学び込んだ。


しかしそこから、「わたしはこう思います」を語ることはできない。

「思っていること」はたくさんあったとしても、医療者でもなく、研究者でもなく、ましてや臨床の経験もないぼくが「わたし」を語ることなどできないし、語るべきではない。そんなふうに思ってきた。


それでもたまに、岸見一郎先生と一緒の場で、いわばサポート役のようにしておしゃべりする機会にめぐまれると、「おれはアドラーについて、その思想について、こんなにもたくさんしゃべりたかったのか!」と驚かされる。それだけ惚れ込んできたし、影響を受けてきたし、自分に染み込んでいるのだ。「わたし」を主語にして語れるほどに。

きのうからはじまった講演会ツアー。これから京都金沢水戸札幌仙台広島東京福岡(小倉)と、3月半ばまで毎週全国を飛び回ります。いわゆる「講演会」とは少し違った、たのしい場になると思いますので、ぜひお越しくださいませ。