ない、わけじゃない。少なくともいまはまだ。
たとえば花粉症などが、そうである。
スギ花粉の飛び交う春の季節、ぐすぐす鼻を濡らしながら、ごしごし目をこすりながら、なかなか病院に行こうとしない。アレルギー検査を受けようとしない。受けてしまったら最後、自分が花粉症であることを科学的・医学的に認めることになる。なので意地でも病院には行かない。
といった心性は、わりと多くの人が持つものだと思うのだけれども、ぼくの場合はここに「探しもの」が加わる。
いまいま現在の話をするなら、パスポートだ。
最後にパスポートを使ったのは、今年の2月だった。渡航できたし帰国できたのだから、今年の2月までは確実に持っていたはずだ。そして普通に考えて、自宅まで持ち帰ったはずだ。
なのに普段パスポートを入れているケースに、それが入っていない。どこか別のところに置いたり収納したりした記憶もない。ぼんやりと「あのへん」にありそうな気はするけれど、探す気になれない。だってそうだろう、探してしまえば、それで見つからなければもう、「ない」ことが確定してしまうのだ。探そうとしなければそれは「ない、わけじゃない」のだ。
これはどこか「おれはまだ本気出してないだけ」の心理に似ている。
と言いつつ今朝方、急きょ海外出張するハメになって大慌てでパスポートの再発行手続きをとる夢を見た。そろそろ探したほうがいいのだろうか。