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それを登山にたとえるのではなく。

一昨日、カッキーこと柿内芳文氏がオフィスにやってきた。

いちおうは原稿の打ち合わせであるものの、ほとんどの時間、関係ない話をして帰っていった。前日の夜に送っていた原稿を、しっかり読めていなかったのだと想像する。まあ、彼だってほかにも仕事を抱えているのだし、まったく夜型ではない人なので仕方がない。夜遅くに原稿を送った自分が悪かったのだ。

こういう日の打ち合わせは、たいてい映画の話に終始する。一昨日は、テーマが「三部作の映画」におよんだ。じつはぼくの原稿も三部構成なのだ。


「バック・トゥ・ザ・フューチャーで言うと・・・」

彼は語る。いま、この原稿は西部開拓時代にタイムスリップした『3』の、中盤あたりを描いているところなのだと。


「いや、ごめん。おれ、バック・トゥ・ザ・フューチャーの『3』って観てないんだよ。『2』でもういいや、って思っちゃって」

「ええーっ!?」

たしかに世間的な評価はそんなに高くないけれど、と『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』を擁護する彼の熱弁を話半分に聞きながら、ぼくは『ゴッドファーザー』シリーズのことを考えていた。


この原稿全体をゴッドファーザーに置き換えるなら、もう『2』までは終わっている。かなりの手応えとともに、『2』はクランクアップしている。そして現在、せっせと『3』を撮りはじめているところだ。『3』の、そうだなあ、ジョーイ・ザザたちからヘリコプターで襲撃を受けたあたり。そしてマフィア稼業について「足を洗ったと思ったら、また逆戻りだ!」と憤るあたり。あのへんを書いているところなのかなあ。

と、考えてゾッとした。

ここからもう一本映画をつくるくらいの作業が待っていることにもゾッとするし、それを『ゴッドファーザーPARTⅢ』や『ダークナイト・ライジング』にしないためには、もっともっと大変な作業が待っている。うんざりするけれど、気は引き締まる。ここから先の展開次第で、全体が台なしになっちゃう可能性はおおいにあるのだ。


おおきなプロジェクトの進捗状況を登山にたとえて「いま6合目あたりだ」みたいな話をする人がいるけれど、好きな映画や漫画にたとえて考えたほうが気を抜かずにやれるんじゃないだろうか。「キングダムでいえば、いまこのへんだ」とか、「アベンジャーズでいえば、いまこのへんだぞ」とか、そんな感じで。