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心地のよい、くたくた。

くたくた、ということばがある。

現在のぼくのように、疲れきっているさまをあらわすことばであり、同時に煮物などがよく煮えているさまをあらわすことばでもある。その連想もあってだろうか、頭脳労働に疲れきったとき「あたまが煮え煮えになっている」みたいな日本語が用いられることも、たまにある。

そういえばいつのころからか、マンガチックに受験生を描くとき、その額に「熱さまシート」的な解熱湿布剤を貼った姿が散見されるようになった。ぼくは過去の人生において一度も熱心な受験生であったことはないのだけど、いわゆる受験勉強というものをしたことがないのだけど、それでもぼくが受験生だった時代にあのようなシートはなかったと記憶しているし、あったとしてもそれは発熱時にしか用いられないものだった。

ここで問題なのは、あの熱さまシートが頭脳労働の煮え煮えを緩和させるものとして貼られているのか、それとも眠気覚ましの冷え冷え効果を狙って貼られているのか、である。

眠気覚ましを考えてのことなら、20代から30代にかけてフリーランスという名のブラック企業で激務をこなしていた経験から言えることがある。冷やしたところで、眠気は去らない。むしろ、冷やした患部は余計なぽかぽかを獲得し、かえって眠気を誘うことになる。いらぬ浅知恵を働かせることなく、シンプルにカフェインを摂取するのがいちばんよろしい。コーヒーでは舌と胃袋が疲れてしまうので、薬局に売っているカフェイン剤を飲むのがいちばんよろしい。

……と書いてて気づいたのだけど、受験生は別に「徹夜してでも終わらせなきゃいけないなにか」を抱えているわけではない。どころか、徹夜の煮え煮え状態をつくっていては、入るべき知識もあたまに入らず、ただ無闇に気力体力を消耗しながら夜を徹するだけになる。一方で20代から30代にかけてのぼくには「徹夜してでも終わらせなきゃいけないなにか」が確実にあった。もっと平たいことばで言うなら、明日や明後日の締切があった。そうして考えるとやはり、受験生にカフェイン剤など奨められないし、ぼくだってもう二度と飲みたいとは思わない。


さきほど、久方ぶりにカフェイン剤に頼ろうかという作業に、ようやくひと段落がついた。バトンズの学校、その選考作業である。あとは週末から月曜にかけて最終確認をおこない、15日の火曜日に選考結果の発表という流れになる。くたくたに疲れきってはいるものの、それはフルマラソンを走り抜いたような心地のよい疲れだ。

家に帰って、犬とぐだぐだしよう。