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姿勢を矯正する場所は。

ふとした思いつきで、整体に通いはじめた。

そろそろ疲れがたまっているのかもしれないな。といった程度の、さしたる自覚症状のないままの、気まぐれの通院である。整体師はいかにも大袈裟に首や肩や腰やの不調、または歪みを指摘し、ぐいぐいに揉みほぐし、宿題と称してさまざまな(日常生活のなかでやるべき)ストレッチを指導し、仕方がないから気がついたときに言われたように身体を動かしている。

何年も前、姿勢矯正サロンに通ったときもそうだった。施術そのものは1時間程度。長年にわたって曲げ育ててきた猫背が、その1時間で改善するのだったら施術師は手品師だ。しかしながら施術師は施術師で、そのときにも幾種類もの宿題を出された。背中を伸ばすストレッチ、大胸筋を伸ばすストレッチ、太ももを伸ばすストレッチ、首を伸ばすストレッチ、などなど。

そうして次回来院したとき、やや詰問に近い調子で「ちゃんと毎日やりましたか?」と聞かれ、なんだかビクビクしながら通っていたことを思い出す。まあ、そうやって毎日習慣づけていかないことには姿勢も、なおってくれないのだろう。

さて、ここからが本題である。姿勢のことを英語では「スタイル」と言う。そしてスタイルには、「文体」の意味がある。

どんなに立派な姿勢矯正サロンに通ったところで、姿勢(スタイル)は矯正されてくれない。ほんとうに姿勢を変えようと思うなら、施術師の手を借りることなく自宅でせっせとストレッチに励む必要がある。街を歩いているとき、椅子やソファに座っているとき、場合によってはベッドで寝るときの姿勢まで、意識的に正していく必要がある。

同様に文体も、日々(それを矯正する意識を持って)書き続けるなかでようやく、歪みがなくなっていくものなんだと思う。心身に余計な負担をかけることなく、いくらでも書き続けられる、自分の骨格にぴったりのスタイルが見つかっていくのだと。

mixiが20周年を迎えたのだそうだ。noteもたしか、今年で10周年である。この20年のあいだに、「mixi発」や「note発」の書き手さんがたくさん誕生した。そういう人たちの投稿を見てもらうと、きっとわかるだろう。書き手として、ちゃんとひとり立ちした人たちはみな、そのキャリア初期において阿呆ほどたくさんの文章を投稿しているはずだ。そうやって自身のスタイル(姿勢)を整え、たしかなものにしているのである。