IMG_4012のコピー

町田康さんの歌。

なにを言っているんだ、まだ仔犬じゃないか。

そんなふうに笑う人だっているのかもしれない。犬と暮らすようになったその日から、「さあ、ここがきみのおうちになんだよ」と玄関を開けたそのときから、どこかでずっと別れの日のことを考えている。笑って、歩いて、撫でて、見つめ合って、からだをくっつけて。そんな日々を送りながらずっと、別れの日のことが頭から離れない。犬と暮らすということは、いつかかならずやってくる別れを引き受けるということでもあるのだ。

もちろん犬にかぎらず、生きとし生けるものとの出会いはすべてが別れにつながっていくものなんだけれど、人との出会いや別れと違って犬(どうぶつ)の場合は自分が時間と命を預かっているような、託してもらっているような、そんな気になるから余計に意識するのかもしれない。

きのう、町田康さんが亡くなった愛犬・スピンクについて歌う動画を見た。

ぼろぼろに泣いて、思い出しては泣いて、何度も何度もみている。

小説家たちが愛犬や愛猫について書いたエッセイは、いずれも抜群におもしろい。それはフィクションの紡ぎ手である小説家と、人間のすべてを丸裸にしてしまう犬猫たちの、愛情とおかしみに満ちた綱引きの結果生み出されるのが、犬猫エッセイだからなのかもしれない。

もしも一冊、町田康さんでおすすめを挙げるとするならやっぱり『猫にかまけて』かなあ。今日も自宅で、犬と一緒にお仕事をしています。