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なんにも考えてなかったわけがない。

20歳のころの自分は、どんなことを考えていたんだろう。

なにも考えていなかったような気もするし、やたらと大それたことばかりを考えていた気もする。映画監督になりたいと思っていた。いや、なりたいというよりも「なるんだろう」と思っていた。おかげで、「なったあと」のことばかり考えていた。あるいは小説家もいいかもな、と思っていた。もしも自分が書くのなら史上最年少で芥川賞を獲るべきだと思っていた。そして当時の最年少記録は村上龍氏の24歳だったため、「23歳までに書かなきゃならないのかあ。面倒くさいなあ」と腕組みしていた。まだ一作も書いたことがないにもかかわらず、だ。

はっきり言って、大馬鹿野郎である。

インターネットがなかった時代の、地方在住の、サブカル好きな文系野郎にありがちな誇大妄想だ。井の中の蛙どころか、井戸の場所さえ知らない軒下の雨蛙である。

このように、大人になってからむかしの自分を振り返ると、「あのころの自分は底なしの馬鹿野郎だった。なんにも考えてなかった」としか思えない。けれど、そういう馬鹿もふくめて自分なのだし、さすがに「なんにも考えてなかった」わけはないのだ。好きな女の子のこととか、昨日観た映画のこととか、さっき読み終わった本のこととか、明日のバイトのこととか、「なにか」は考えていたはずである、忘れてしまっただけで。

その忘却を棚にあげて「なんにも考えてなかった」と片づけるのは、むかしの自分に失礼だろう。それこそなんにも考えようとしない(思い出そうとしない)人の態度だろう。


来月、5月22日(日)に、学生さん限定のトークイベントにお呼ばれしている。ほぼ日さんの学生採用企画「小舟のインターン」関連のイベントだ。

どういうイベントになるのかまだわからないけれど、学生の方々と接するのはたのしいことだし、「おれはあのころ、なにをしてたんだっけ?」を見つめなおすいい機会でもある。

なんか考えてたんだし、なんかしてたはずなんだよ、みんな。