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先を読むことと、足もとを掘ること。

ぼくは、まわりの人よりずいぶん遅れて iPhone を買った。

iPhone(3G)が日本で発売されたのが2008年。たぶんぼくは、2010年とか2011年とかにようやく iPhone 4 を買った。それまではずっと、ガラケーを使っていたわけだ。

ガラケーにしていた理由は簡単で、当時テレビを置いていなかった事務所で(ワンセグ放送により)大相撲中継を観るためである。魁皇が現役だったころまで、ぼくはほんとうに大相撲が大好きだったし、年に何度も国技館に足を運んでいた。

と、このままの流れでいくと相撲や魁皇の話になってしまうのだけど、それを書きたかったわけじゃない。問題は iPhone を買った時期の話だ。


買ってから1か月も経たないうちに、ぼくはこんなふうに思った。

「たしかに iPhone を買ってよかった。ガラケーよりもおもしろいし、なにかと便利だ。でも、発売直後の2年前に買った人たちと、いま買った自分のあいだにはこれといって差は見当たらない。開発者ならともかく、ユーザーとしての先行者利益などどこにもなく、むしろ十分にアプリが出揃ったこのタイミングで買うことのほうが正しかったのかもしれない」

この思いはいまでも変わらないし、その後のあれこれについて、けっこう大事な指針となっている。


流行を追いかけること。最新のテクノロジーに敏感であること。そこに常時目を光らせておくこと。……これら「なにがどう変わるのか」を追いかけ、考えていくことは、たのしい人にとってはたのしいことなんだろうけれど、正直ぼくには疲れるばかりで、あまりおもしろい作業ではない。また、話題の最新テクノロジーに関して、その真贋を見極める目を持っていないため、だまされることも多々ある。

なのでぼくは、節穴だらけの目で「なにがどう変わるのか」を追いかけるのではなく、「なにが変わらないのか」を考えるようにしている。

もしも「これは変わらない」と思えるなにかを発見できれば、周囲の雑音に惑わされることなく、安心してその土を掘ることができる。しかも深く、掘ることができる。


仮に時代が変わったとしても、そこは凡庸なマジョリティのひとりとして、先行者たちの2年後・3年後についていけばいいだけだ。先行者利益の商売を目論んでいないかぎり、遅れのデメリットは特にない。いちばん怖いのはなにひとつ深掘りできないまま、先行者を1年遅れで追いかける「早いつもりの人」になることだ。

出る釘は浮かれる。
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ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp
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