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もう一度あの日には戻らない。

人生なんてものは、生きてみなけりゃわからない。

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』にさらっと差し挟まれていた一節だ。

先日、うちの犬をわが家に迎えてから7年目となる「ウチノコ記念日」を迎えた。犬にも当然誕生日はあるのだけど、保護犬のようにその日を追えない犬も多いし、誕生日のわかっている犬にしてもその日は母犬のもとで過ごしたのだから、人間家族としてはやはりわが家に迎えた「ウチノコ記念日」のほうが感慨深かったりする。


2016年9月。犬を迎える前日の夜。万全の準備を整えたつもりでいた。
この写真を見ると、いつも泣きそうになる
犬がやってきた当日。柵をすりぬけるほどちいさいことが発覚
あわてて100円ショップで追加の柵を購入
犬はすこぶるご機嫌ななめだった
あばれた
あばれた
とってもあばれた
すぐ寝た

当時のことを思い出すたび、「おたがいどうすればいいか、わかんなかったよなあ」と思う。犬は犬であたらしい環境に戸惑っていたし、人間は人間であたらしい生きものに戸惑っていた。こちらが不慣れなせいで、知らないことが多すぎたせいで、かけてしまった苦労もたくさんある。「いまの知識でもう一度あの日からやりなおせたら」と思わなくもない。


ただ、そういう「やりなおしたい日々」こそが、ぼくたちにとっての「かけがえのない日々」でもあるのだ。なにもかもが万事快調で、なんの失敗もなければ後悔もない毎日なんて、いかにも扁平すぎるじゃないか。泣いたり、おろおろ戸惑ったり、全身で謝ったり、あわてて病院まで抱き走ったり、そういうびしょびしょの真剣が、ぼくらのかけがいのない日々じゃないか。

人生なんてものは、生きてみなけりゃわからない。

これからもよろしくね。