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雨の降る日のクリエイティブ。

どうすれば、雨がたのしくなるか。

クリエイティブにたずさわる人間として、これはとても大切な課題だと思っている。基本的に、雨は嫌なのだ。濡れるのも嫌だし、髪がくるくるになるのも嫌だし、靴のなかがびしょびしょになるのも、傘の置き場に困ったりそれをどこかに忘れたりするのも、なんでもとにかく嫌なものなのだ、雨というやつは。

その「嫌だけれど避けられないもの」である雨を、いかにして「たのしいもの」に変えていくか。そこにはアイデアが必要だし、視点の切り替えが必要だし、要はクリエイティブが必要になってくる。


ある時期、ぼくは「傘かな」と思った。

コンビニで買ったビニール傘なんかを使っているから、雨の日にどことなく貧乏くさい気持ちになるのだ。とんでもなくおしゃれな、なんなら晴れの日だってさして歩きたいような傘をもっていれば、雨の日がたのしくなるのではないか。そんな仮説を立てたぼくは、これまでに何本ものデザイン性に優れた傘、機能性に優れた傘を購入してきた。

しかし、ここがわれながら庶民なのだけど、そういう高級傘はあまり使いたくない。ざんざん降りの大雨とかだったら使ってもいいけど、たとえば今日の東京地方みたいな小雨だと、むしろコンビニ傘くらいのほうが気楽で、普段着の延長として使えたりする。高級傘はどこかスーツ的な、ネクタイ的な「よそ行き感」が拭えない。


そこで最近行きついた答えが「防水スプレー」だった。

コンビニで買った折りたたみ傘に、防水スプレーをたっぷり振りかける。すると傘はおもしろいように水をはじく。建物内に入り、閉じた傘を数回ぶんぶん振るだけで、まるで雨など振っていなかったかのようなつるつるの顔を取り戻す。当然そのまま鞄に入れても濡れることはなく、いたく気持ちがいい。なんといっても、コンビニで買った低級品がそんな変身を遂げることがおもしろい。

さらにもうひとつ、防水スプレーにはいいところがある。


もともと防水スプレーとは、傘なら傘にたっぷり(濡れるくらいまで)振りかけたのち、完全に乾燥させる必要がある。つまり、雨が降ってきたからとあわてて防水スプレーを振りかけていては間に合わず、最低でも前日に、できることなら(いつ降るともしれない雨に備えて)晴れの日に、それを塗布しておく必要がある。

なんでもない晴れの日に、傘をひろげて防水スプレーを振りかける。布地の色が変わるほどぐっしょり濡れた傘が、少しずつ乾いていく。そして完全に乾いた翌日や翌々日に、傘を折りたたみ、鞄に収納する。さあ雨よ、いつでも降りやがれ。おれはいつでも準備万端だぞと、ほくそ笑む。

この一連の作業は、雨を予約している感というか、落とし穴を掘って待ちわびている感があって、非常にたのしい。


今日の雨が止んだらまた、ぼくは防水スプレーを取り出して次の雨を予約するのだろう。その姿を考えるのも、ちょっとたのしかったりする。