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なんだか長かった、きょうの出来事。

ひさしぶりに早起きをした朝だった。

スマホで天気予報アプリを見ると、気温も上々。そこで、よし。一念発起したぼくは犬の散歩時間を長めに設定した。けさは2時間、散歩しよう。てくてく歩きまわるだけではなく、公園を一緒に走り、思う存分にくんくんをさせ(これが犬にとっては相当にあたまを使う行為なのだそうだ)、散歩から帰ったらさすがにバタンキューしてしまうくらい、疲れさせてやろう。

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がんばった。写真を撮ってる場合じゃないくらいに走り、くんくんをさせ、あまい缶コーヒーでカロリーを補給しながら、これでもかというほど2時間強、歩きまわった。

へとへとになっての帰宅後、足拭きを終えると犬は、「もっともっと!」とばかりに部屋を走りまわっていた。疲れた様子、どこにもなかった。スマホの歩数計を見ると、表示された歩数は1万2000歩弱。そんなもんかー。と、なんだかがっくりしながら通勤する途中、膝から太ももにかけて軽い筋肉痛を感じた。イビチャ・オシムの有名なことば、「ライオンに追われたウサギが肉離れを起こしますか?」を思い出しながら、うちの犬は筋肉痛を起こすのだろうか、と思った。こいつにとっての運動とは、基本的に人間とともに出かける散歩がベースであるはずで、だったらずいぶんなまっているんじゃないのかなあ、と思うのだ。けれども実際に走らせてみるとぐんぐんに走るし、疲れ知らずだし、筋肉痛を起こした人特有のよぼよぼした歩きかたを見せることはないし、当然肉離れなど起こさない。人間と犬、いろいろ違うのだと思うしかなかろう。


午後、カッキーこと柿内芳文氏が来社し、本について打ち合わせた。

部屋に入ってくるなり彼は、漫画の話をはじめた。そして最近会ったという漫画家さんの話をはじめ、いま別途彼が取り組んでいる企画、彼の好きな映画、とにかくいろんなことを一方的に語っていく。「へー」とか「ほー」とか「ふーん」とかの音でうなづきながらぼくは、最初に抱いた疑念が確信に変わっていく自分を発見した。


「こいつ、原稿読んでねえな」


彼との打ち合わせに合わせてぼくは、一昨日の夜、「いまここまで書いてるから読んでね」の原稿を送っていた。しかし彼は、来社から1時間経っても原稿に触れようとしない。こういう場合に考えられるのは、送られてきた原稿のクオリティが著しく低くてなにをどう切り出すか困っているパターンなのだけど、今回にかぎってはそれが起こるとは思わない。自分なりに、自信のあるパートを送った。だったらもう、読んでいないに違いない。仮に読んでいたとしても、ほんの数分前、タクシーのなかでさらっと確認した程度だったに違いない。まあ、彼がいま忙しいのはよく知っている。超シングルタスクな男なのに、トリプルかそれ以上のタスクを抱え込んでいる。怒るつもりは、まったくない。

いい加減、なかば助け船のように「カッキー、読んでないでしょ?」と切り出そうとした瞬間、彼が原稿を語りはじめた。

絶賛オブ絶賛ともいえることばで、原稿を語りはじめた。今月のスケジュールや、タイトルの方向性も共有することができた(ぼくも彼も、同じようなタイトルをイメージしていたことがわかった)。「あとはやるだけ」感が、ますます高まってきた。


そして彼が帰ったあと、やはり思わずにはいられないのだ。


「あの漫画や映画やレバニラのくだりは、ほんとに必要なのか?」と。「もっと早く、原稿の話はできないのか?」と。「だっておれ、そんなにあの独演会タイムをたのしんでないぞ」と。

もしも「編集者・柿内芳文」の取扱説明書を書くとしたら、作者はぼくしかいないと思うのだけれども、いまだよくわからないことだらけなのだ、この人の扱いは。

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明日は札幌で講演会。北海道のみなさま、どうぞよろしくお願いします。

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