8年間は長い。
2013年、それはぼくにとって30代最後の年だった。
もうすぐ40歳になる。いま振り返ればどうでもいい区切りに思えるけれど、当時の自分にはおおきな数字だった。なんだか焦っていた。23歳でライターになり、もう15年が経つ。紆余曲折のあいだにすてきな仕事仲間(編集者)にも恵まれ、いい仕事ができている実感もあった。けれども自分にはまだ、「旗」がない。古賀史健といえばこれ、と言われるようなわかりやすい旗がない。このへんで、30代のあいだにひとつおおきな旗を立てておかないと、ちょっとヤバイんじゃないか。
そんな2013年の年明け、ぼくは柿内芳文氏とともに(偶然)こんな書き初めツイートをした。
バカボンなぼくには「旗を立てる」の具体が、ミリオンセラーを出すくらいしか思いつかなかったのだ。興味深いのはこのツイートで、ぼくは「ミリオンセラーいきます」と書いているのに対し、柿内芳文氏は「ミリオンセラーを目指す」と、若干慎重な言いまわしを選んでいるところだ。
けっきょくこの年の12月12日、『嫌われる勇気』が刊行され、何年かの時間をかけてミリオンセラーになってくれた。
いま『嫌われる勇気』は266万部で、続編の『幸せになる勇気』が78万部。あわせて344万部ということになっている。ここで驚いてしまうのが、世界累計が900万部(国内344万部、海外556万部)に達していること、日本国内よりも海外のほうが多く読まれていることだ。
さすがにもう「見守る」ことしかできない8年前の本だけれども、発売10周年を迎えるころには、世界累計1000万部の報せが届いてくるのではないか、なんてことを思っている。
いろんなことのあった8年間。「あっという間の8年間」と続けたいところですが長かったですよ、やっぱり。この本に関わり、読んでくださったすべてのみなさま、あらためてありがとうございました。
そしていま、しっぽの見えはじめた50代を前に「40代のうちに、もうひとつ『旗』を立てなきゃ」と焦りはじめた自分がいます。