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新社会人のとき、いちばん驚いたこと

4月だから、という話題でもないのだけども。

ぼくが社会人になったとき。転職して出版の世界に足を踏み入れたとき。あまりのショックに頭がくらくらしたのを覚えている。残業の多さとか、理不尽な上司とか、大学時代のアルバイトよりも安い給料とか、そんなことに驚いたのではない。

当時の率直な驚きを言葉にするなら、「こんなテキトーで大丈夫なんですか、みなさん」のひと言に尽きるだろう。

いいかげんなおじさんたちのあいだで、あらゆる物事が口約束で決まり、あいまいな記憶のなかに処理され、うやむやとほどほどのラインで事が進み、それでもどうにか仕事がまわり、会社がまわり、よのなかもまわっている。

なんてあやういバランスでまわってるんだ、この世界は。心底びっくりしたし、その驚きは案外いまも続いているような気がする。


なんていうんだろう。子ども時代のぼくは、大人たちって、もっとしっかりした人たちだと思っていたし、社会とか国とかも、ものすごく綿密な計算と調整のうえに成り立っていると思っていたのだ。大人ってすげぇんだろうなー、と思っていたのだ。

そして、ほとんどまともな会社員生活を送れないままフリーランスになったせいもあり、ぼくは「会社員」についても同じようなあこがれを抱いていたような気がする。すげぇんだろうなー、おれなんかにはぜったいできないんだろうなー、と。


まあ、いまでも自分に会社員ができるとは思わないんだけど、それにしてもときどき目眩がするのだ。かくもテキトーな人たちがテキトーに寄り集まって、よく仕事や社会がまわってるもんだ。なんて奇跡的であやういバランスに生きているんだぼくらって、と。