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違った場所で、違ったことを。

いまさらながら、の話をしよう。

いまさらながらぼくは、ノマドっていいじゃん、と思っている。喫茶店での仕事、はかどるじゃん、と思っている。気づくのが遅すぎたとは、まったく思わない。遅いも早いも関係なく、気づけたことが大事なのだ。明日も朝から喫茶店に行こう。モバイルバッテリーとノイズキャンセリングヘッドホンを持って、もちろんパソコンと iPad も持って、喫茶店に出かけよう。

断っておくがぼくだって、ノマドワークを試したことがないわけじゃない。何度となく試し、そのつど挫折してきた。こんな芸当、おれには無理だとあきらめてきた。ひるがえって今回、どうして「いいじゃん」になったのか。


原稿を書いていないからである。


いま、ぼくのお尻に火を点けているお仕事は、バトンズの学校である。より具体的に言うと、受講生の方が書いてくださった課題原稿に目を通し、添削と総評のフィードバックを戻すのが、目下のお仕事だ。あたまも使うし、気も遣う。目を集中させてる必要もあり、へっとへとに疲れまくる。けれども不思議と、喫茶店のなかでもお仕事できてしまう。

一方、たとえば自著の原稿を書こうと喫茶店に入っても、まったくお仕事にならない。集中の念は千々に乱れ、数分おきにワープロソフトをブラウザに切り替え、ニュースサイトやソーシャルメディアを徘徊してはこころに波風を起こし、けっきょく1行も進まないままメールの処理をしたりする。おれにノマドは無理なのだと、アイスコーヒーを飲み干す。

それがどうだ、原稿を書きさえしなければ、おれにもノマドワークができるのだ。腹が減ったらサンドイッチ的な食べものを注文し、数時間後に「甘いものがほしいな」と思ったならばケーキを注文すればよろしい。ホットコーヒーもアイスコーヒーも、エスプレッソだって注文すれば出てくる。なんだか最高じゃねえか、これ。


数十年来の仕事と違ったなにかにチャレンジしてみるって、ほんとに大事なことだ。ネタとして大袈裟な話をしてると思われるかもしれないけれど、ぼくにとって相当におおきな驚きだったのだ。自分が喫茶店でも仕事できるってことは。