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今年読んでおもしろかった本10冊。

そうか、もうそういう振り返りをする時期なのか。

ツイッターを見ていたら、今年読んでおもしろかった本を挙げている方々がたくさんいたので、ぼくもそれに習うことにしよう。思いつくままに、ひとまず10冊を。

『身分帳』(佐木隆三)

今年公開された西川美和監督作『すばらしき世界』の原作。本としてのおもしろさもあるのだけど、それ以上に西川美和さんがこの原作に出合い、惚れ込み、これを映画化したいと思って、あれだけの映画に仕上げきったプロセスに興味津々でした。


『一度きりの大泉の話』(萩尾望都)+『少年の名はジルベール』(竹宮恵子)

このふたつは、ぜひともセットで読んでほしい。ぼくは萩尾望都さんの本から読んだけれど、刊行順にまずは竹宮恵子さんの本を読んで、そこから萩尾望都さんのほうを読むのがいいんだろうな。才能ってことばについて、今年いちばん震え上がった2冊かもしれません。


『尊皇攘夷』(片山杜秀)

サブタイトルにあるように「水戸学の四百年」を論じた一冊。多作な片山さんの本のなかでも、いちばん筆が乗ってるんじゃないかな。踊るような筆さばきで縦横無尽に語りまくるさまが、めちゃくちゃかっこよく、おもしろいです。


『民主主義』(文部省)

上記『尊皇攘夷』からの流れで読み返した一冊。新憲法の施行を受けた昭和23年、文部省が法哲学者・尾高朝雄らに呼びかけて編纂した、熱く、鋭く、普遍的かつ予言的な「民主主義の教科書」です。

『Humankind』上下(ルトガー・ブレグマン)

読んで、これはぜったい『サピエンス全史』級の話題を呼ぶだろうなあ、と思った一冊。いまのところ、あの本ほどの話題にはなってないけれど、ここに書かれていることが「ほんとう」だとしたら未来は生きるに値する場所だし、これを「ほんとう」にしていくことが、これからの時代を生きる人間の仕事なんだろうと思わされました。希望がほしけりゃこれを読め、と言いたいです。


『嫌われた監督』(鈴木忠平)

ひさびさに登場したスポーツ・ノンフィクションの大傑作。こんなに興奮しながら読んだのは、増田俊也さんの『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』以来、10年ぶりじゃないかな。野球を知らなくても、当時の中日ドラゴンズを知らなくても、なんなら落合博満を知らなくてもたのしめるはずの本です。すばらしい。


『考える親鸞』(碧海寿広)

親鸞の思想を論じる本は、毎年たくさん刊行されていますが、こちらは親鸞を通じて近代の日本思想史を考える、「近代以降、親鸞はどう読まれてきたか」を論じる本。清沢満之、田辺元、三木清、そして吉本隆明などなど、日本独自の思想を追い求め、その解を親鸞に見出そうとした思想家たちの論点がテンポよく展開していきます。著者・碧海寿広さんの「評者」としての目の鋭さも気持ちいいです。


『伊藤比呂美の歎異抄』(伊藤比呂美)

上記『考える親鸞』からの流れで購入。「歎異抄」の口語訳は数あれど、これまで読んだもののなかでいちばんよかった。やっぱり仏教学者さんの訳した歎異抄って、親鸞や唯円に対する尊敬の度合いが強すぎて、どうにも「親鸞聖人のありがたいお説教」になっちゃうんですよね。その点、伊藤比呂美さんは親鸞や唯円との距離感が抜群で、新鮮で、とてもよかったです。


『ぼくは犬や』(ペク・ヒナ)

去年刊行された絵本なのですが、ぼくは最近知りました。すべてのページが愛おしい。これまでに読んだ犬を主人公とする絵本のなかで、いちばん好きかもしれません。


こうやって振り返ってみると、あらためて今年は小説を読めていないなーと思いますね。来年はもうちょっと意識的に小説を読もうと思います。