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野菜をめぐる中年の驚き。

大根サラダ、という食べものがある。

せん切りにして、水にさらした大根にさっぱりしたドレッシング(あるいはポン酢)をかけてシャクシャクした食感をたのしみながら食べる。そういうサラダである。消化にもいいし、なんとなく健康的だし、葉野菜のサラダよりも箸でつかんで食べやすい。最近ではスーパーやコンビニで、カット済みの大根サラダもよく見かける。うちの近所のスーパーだと、夕方を過ぎると1袋50円で売っている。

さて、このカット済み大根サラダ。わが家では最近、鍋に入れて食べるようにしている。

うすく出汁をひいた鍋(面倒ならば白だしを少し投入した鍋)に、おおきめに切ったキャベツを入れる。ふたをして、キャベツの甘みが出るまで火を通す。そしてキャベツに火が通りはじめたところで、カット済み大根サラダをわさわさと投入する。火加減など、どうでもよろしい。サラダで食べてもおいしい大根なのだし、火が通ったあともおでん的な味の染みかたをする。

そうして豚しゃぶ用の肩ロース肉やバラ肉を適時しゃぶしゃぶしながら、ポン酢で食べていく。これがもう、大量の大根おろしを投じたみぞれ鍋よりラクチンだし、シャクシャクした食感もあるし、豚の脂もうまい具合に中和してくれるしで、ほんとうにうまい。また、キャベツの甘みとも相性がよく、いくらでも食べていられる。毎週のように食べているし、きのうも食べた。


10代から20代、そして30代の前半くらいまで、肉を食うことばかりを考えていた。とんかつに添えられたキャベツ、ハンバーグに添えられたミックスベジタブルを、邪魔者としか考えていなかった。

そして50代に突入した現在もなお、肉を求めている。歳をとったら肉が嫌いになるなんて、嘘だと思う。けれど、肉を求めるその片方で、おいしい野菜を欲する自分が生まれてきたのは中年の驚きだ。出前や外食が続くと、内臓の奥のほうから「野菜が食いてえよお」「食物繊維が欲しいよお」との叫びが聞こえてくる。そしておいしい野菜を大量に食べることができると、妙な満足感がある。それをかなえる代表的な料理が、ぼくの場合は鍋だ。


キャベツと大根の豚しゃぶ、調理の手間もほぼゼロなので、ぜひお試しを。鶏肉を入れてもうまいです。