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こまったときの、犬頼み。

犬がすこし、冬支度をはじめている。

全身を覆う毛が、もこもこしはじめている。散歩以外のほとんどを温度管理のなされた室内で過ごしながら、犬は季節にあわせて毛並みを変える。お前の摂理は「外」にあるんだねえ、と思う。

飼い主以外にはわからないかもしれないけれど、もこもこしてきました

書きたかったのは「寒くなってきましたね」の話だ。

けれど、ただここ数日の寒さを書いてもそれは「つぶやき」にしか過ぎず、犬の冬毛から話をはじめた。これはぼくにとって、キンモクセイ以上に「もうそんな季節なのか」を実感させる秋冬の風物詩である。

そして犬や季節の話を書いているということは、ほかに書くことが浮かばない証拠である。もちろんここから犬のかわいさについて延々と語っていってもいいのだけども、それもちょっとやり尽くした感がある。さあ、どうしよう。なにを書こう。

秋といえばそう、読書の秋である。食欲の秋であり、芸術の秋である。

このへんはもはや言ったもん勝ちみたいなところがあって、「ダイエットの秋」であろうと「庭仕事の秋」であろうと「長風呂の秋」であろうと、言えばそれらしく聞こえるものだ。「ラーメンの秋」や「牛丼の秋」、「キーマカレーの秋」など、季節性のとぼしい単語ほどマッチしたりする。

と書いたところで、そうだな。

ぼくにとっての秋は、まったく散歩の秋だ。春の散歩もいいけれど、秋口の散歩はしみじみ「気持ちいいなあ」と思う。夕暮れも、キンモクセイも、どこかの家から漂う肉じゃがの香りも。