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黒澤明の映画術

きのう、仕事の調べものをしていたら、すっごくおもしろいビデオを見つけました。黒澤映画の絵づくり、カメラワーク、編集について解説するビデオです。

黒澤映画のカメラというと、マルチカメラ・システムの導入とか、望遠レンズの多用、あるいは「太陽にレンズを向けたらフィルムが燃える」と言われていた時代に太陽を撮っちゃったとか、そのへんが話題になりがちですが、これはぜんぜん違う「動き」に着目した解説。その性格上、静止画のキャプチャでは紹介しきれないものなので、ぜひ(とくに出版関係者に)見てほしいビデオです。

じつは大学のころ、映画論の授業で、黒澤明に関する小論文を書かされたことがあります。

たしかぼくはヒューマニズムをテーマに、黒澤明という人が世間でいわれるようなヒューマニストではないこと、黒澤映画に描かれるのは人間賛歌ではなく庶民・民衆への畏怖である、みたいなことを書いた覚えがあるのですが、うーん。やっぱり「物語」に引きずられて映画を理解し、作家を理解しようとしていたんだなあ、といまではわかります。

たとえば淀川長治さんは、映画をほめるときに「きれい」という言葉を多用し、やたらカメラの話ばかりする方でしたが、それが「映画」なんですよね。


本づくりのヒントは、映画にある。編集者、またライターは、とにかくたくさんの名画を見るべし。映画を牽引する「物語」に流されることなく、構成、構図、編集の設計図を確かめながら。

自分にも再び言い聞かせつつ、絶賛推敲中の原稿に戻ります。