過去がどんどん過去になる。
『さみしい夜にはペンを持て』に7刷目となる重版がかかりました。
たくさんの方々からの応援を実感しつつ、がんばった甲斐があった、いい本ができてよかったと、安堵しています。そこできょうは「いい仕事をすること」の効用について、書いてみたいと思います。
いい仕事をする。なんらかのプロジェクトが、うまくいく。そこには当然、よろこんでくれる人がいます。お客さんもそうでしょうし、一緒にがんばった仲間たちもそう。家族や友人たちも、よろこんでくれるでしょう。
そういう「だれかによろこばれること」は仕事のおおきなよろこびであり、次へのモチベーションなのですが、もっと個人的なこととして、いい仕事には別の効用もあるよなあ、と思うんです。
それは「過去がどんどん過去になる」ということ。
たとえば5年前に、いい仕事をしたとしましょう。その後はなかなか、会心の仕事ができなかったとしましょう。自分なりにがんばったけれども結果が伴わなかったとしましょう。
そうすると5年前のいい仕事が、うまいこと過去になってくれないんです。いつまでも当時がつきまとうというか、5年前から抜け出すことができなくなる。ずーっと「つづき」を生きてる感じになるんです。
でも、自分がこころから「よっしゃ!」と思えるような、そしてたとえ少なかったとしても信頼するあの人やあの人から「これはいいね」と言われるような「いい仕事」ができると、5年前のことがちゃんと過去になってくれるんですよね。そうやってどんどん「いい仕事」を重ねていくと、過去がどんどん過去になる。
自分をアップデートするとか、自分を更新するとか、あるいはシンプルに成長するとかの話って、わかるようでわからないものですよ。とくにもの書きみたいな数値化できないスキルにおいては、成長の実感なんてなかなか得られない。
けれど、「過去がどんどん過去になっていく」という感覚を持てていれば、それは成長してるってことなんじゃないのかなあ。一方でいつまでも10年前や20年前の手柄にしがみついていたら、それは危ういんじゃないかしら。
ぼくは今回、いくつかのことが過去になってくれたような気がしています。
これからも、そう思える仕事をやっていきたいっす。